欧州自動車工業会(ACEA)が12月20日に発表した欧州の11月の乗用車販売台数(※1)は、前年同期比+6.0%と10月の+14%から伸びが鈍りました。コロナ禍や半導体不足で供給が制限された間のバックオーダーもあって今年1〜11月累計では+15.6%と大きな伸びを見せていますが、金利やエネルギーコストの上昇などで欧州域内の経済は減速しており、来年は2〜3%の低成長と調査機関は予想しています。加えてドイツでは、EV購入補助金が12月18日で突然終了するなど、牽引役と思われていたEVの成長スピードにも翳りが見えます。欧州の自動車関連の産業政策の状況を振り返りながら、来年の市場動向を見てみます。※1:EU+EFTA+UKの合計(タイトル写真は11月までの車名別販売台数第3位のVW T-Rocと同カブリオレ)

今年販売を伸ばしたのはルノー、VWグループ、ボルボ、テスラなど

今年1〜11月の累計販売台数(※2)でマーケット全体の伸びを上回っている主要ブランドは、シュコダ(+27.4%)、アウディ(+22.3%)、ルノーグループ(+19.5%)、ボルボ(+20.3%)、テスラ(+115.8%)などです。逆に販売台数は増加してもシェアは落としているのは、フォルクスワーゲン(乗用車)ブランド(+13.3%、シェア10.7→10.5)、ステランティス(+5.3%、18.6→16.9)、BMWグループ(+12.2%、7.1→6.9)ヒュンダイグループ(+4.2%、9.7→8.7)、トヨタ(10.1%、7.2.→6.9)、メルセデス・ベンツ(+9.2%、5.7→5.4)などとなっています。また、日産、スズキ、マツダなどの日本メーカーは20〜40%の販売増となり市場シェアもアップしています。※2:数字はACEA(欧州自動車工業会)の発表による。

また、今年欧州で本格的に販売を始めたBYDは1〜11月に約13,000台を販売し、1年目にしては好調な出だしを切りました。さらに先週、欧州市場向けにEVやPHEVを生産する工場をハンガリーに建設することを明らかにしました。

【欧州車名別販売台数トップ10】(1〜11月)
1位:テスラ モデルY・・・・・・・・・・・・229,980台
2位:ダチア サンドロ・・・・・・・・・・・217,244台
3位:VW T-Roc ・・・・・・・・・・・・・・・・191,015台
4位:プジョー208・・・・・・・・・・・・・・184,105台
5位:ルノー クリオ・・・・・・・・・・・・・181,675台
6位:オペル コルサ・・・・・・・・・・・・・176,512台
7位:VW ゴルフ・・・・・・・・・・・・・・・・166,304台
8位:トヨタ ヤリスクロス・・・・・・・163,505台
9位:VW ティグアン・・・・・・・・・・・・160,214台
10位:シュコダ オクタヴィア・・・・149,399台
(Automotive News Europe資料より作成)

EVのマーケットシェアは12.7%から15.4%に上昇

1〜11月の欧州のEVの累計販売台数は181万台と前年同期比で39.7%増加し、マーケットシェアは12.7%から15.4%に上昇しています。プラグインHEVのシェアは8.6%から7.6%に減少しましたが、ハイブリッドは23.8%から26.4%に3ポイント近く上昇しました。

主要国のEVシェアは、ドイツが18%(前年同期比+2.3ポイント)、フランスが16.4%(同+3.4)、UKが16.3%(同+1.3)ですが、南欧のイタリア(4.1%)やスペイン(5.3%)とは大きな差があります。EVシェアが上位の国は、ノルウェー(83.3%)、スウェーデン(38.7%)、デンマーク(34.4%)、オランダ(29.9%)、スイス(20.2%)、オーストリア(19.8%)、ベルギー(19.3%)などですが、シェアの差は政府の補助金などEV優遇策によるところが大きいようです。

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