テスラは、11月30日、テキサス州オースティンの工場でサイバートラックの納車開始セレモニーを実施しました。ボディの外板に、白刃のような光を放つステンレススチール合金を採用して、鋭角的で独創的(異様?)なデザインで衆目の引いたプロトタイプが発表されてから丸4年。「最も強靭」で「未来的」なピックアップトラックは、ようやく市場にその姿を現しました。イーロン・マスク会長が第3四半期の決算発表で、「墓穴を掘った」と認めたほど製造の困難を伴ったサイバートラックは、同じようにステンレススチールのパネルを使った「デロリアンDMC-12」のように一部のカルトカーで終わるのでしょうか。それとも成長に翳りが見える同社の新たな牽引車になるのでしょうか。(タイトル写真は、サイバートラック納車式ライブ配信動画よりキャプチャー)

意外とおとなしかった納車セレモニー

サイバートラックの納車セレモニーは、従来通りテスラファンや「X(旧ツイッター)」のパワーユーザーが注視する中、マスク氏がサイバートラックを運転して登場し、ポルシェ911を凌ぐ加速性能や「スペースX」社のロケットエンジンを軽々と引っ張る牽引能力、9ミリのマシンガンの銃弾を貫通させない強固な外板パネルなどをアピールした後、最初の10人の顧客に納車して40分足らずで終了しました。

今回の納車式は、これまでのテスラの発表イベントと比べると幾分大人しい印象で、紅潮した顔のマスク氏もいつもよりテンションが低い印象を受けました。10月中旬の第3四半期決算の発表時に、サイバートラックは量産が非常に難しく「墓穴を掘った」と吐露し、「25万台規模のフル生産に達するのは2025年で、当面は収益に寄与しない」との発言を受けて株価は10%以上下落しましたが、今回の納車開始のニュースを受けても株式市場の反応は鈍く、今年の最高値の299ドルから2割低い240ドル前後でグズついたままです。

マスク氏の言動にまつわる風評も影を落とす

マスク氏をめぐっては、2022年に買収した「X(旧ツイッター)」でいきなり大規模なリストラを行って反発を呼びましたが、先月は「アンチ・セミティズム(反ユダヤ主義)」と取れる発言を支持する投稿をしたとして、ディズニーやアップルなどの大手企業が同サイトでの広告を停止するなど「X」は試練の渦中にあります。

また、スウェーデンでは、テスラが労働者組合との団体交渉協定を結ばないことに対し、港湾の物流作業者がテスラ車の陸上げや配送をボイコットするストライキが10月から続いており、デンマークやノルウェーでもこれに同調する動きが広がっており、ここでもテスラの反組合の方針が反発を受けています。

マスク氏は、テスラの他に、「スペースX」、「スターリンク」、「X」、「ニューラルリンク」、地下トンネル掘さくの「ボーリングカンパニー」などありとあらゆる最先端分野で事業を展開しており、今年は自身のAI開発会社「xAI」を立ち上げてチャットGPTのような生成AIボット「Grok(グロック)」を発表しています。

ウクライナ戦争では、スターリンク衛星の接続供与がウクライナ軍に死活的に重要な役割を果たし、大国の元首からはテスラ工場誘致をめぐって個別会談を所望され、「X」のフォローワーはD.トランプ前大統領の倍の1億6千万人もいるなど、その一挙手一投足がこれほど注目される実業家はこれまで例がありません。

画像: 「スペースX」がテスト中の史上最大の有人宇宙ロケット「スターシップ」。同社のロケットにもサイバートラックと同じステンレス特殊合金が使われているという。(写真:スペースX)

「スペースX」がテスト中の史上最大の有人宇宙ロケット「スターシップ」。同社のロケットにもサイバートラックと同じステンレス特殊合金が使われているという。(写真:スペースX)

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