テスラは、11月30日、テキサス州オースティンの工場でサイバートラックの納車開始セレモニーを実施しました。ボディの外板に、白刃のような光を放つステンレススチール合金を採用して、鋭角的で独創的(異様?)なデザインで衆目の引いたプロトタイプが発表されてから丸4年。「最も強靭」で「未来的」なピックアップトラックは、ようやく市場にその姿を現しました。イーロン・マスク会長が第3四半期の決算発表で、「墓穴を掘った」と認めたほど製造の困難を伴ったサイバートラックは、同じようにステンレススチールのパネルを使った「デロリアンDMC-12」のように一部のカルトカーで終わるのでしょうか。それとも成長に翳りが見える同社の新たな牽引車になるのでしょうか。(タイトル写真は、サイバートラック納車式ライブ配信動画よりキャプチャー)

衝突安全性については議論が沸き起こる

このように強靭なステンレス合金のボディを持つサイバートラックの衝突安全性については、今年4月にテスラが前面フルラップ衝突テストの映像を公開して以来、大きな議論が起こりました。ネット上では、この動画をフォードF-150ピックアップなどの他のフルサイズピックアップトラックや大型SUVの衝突試験映像と比較して、ステンレスは固く衝突エネルギーを吸収しないので、乗員の受ける衝撃がはるかに大きいという批判や、他のモデルの映像はオフセット衝突のもので対等な比較にならないなど、喧々諤々の議論がされています。

米国道路交通安全局(NHTSA)や米国道路安全保険協会(IIHS)など第三者機関による衝突テストはまだ実施されておらず、テスラも頭部損傷係数(HIC)などの傷害値を公表していないので判断できませんが、米国の衝突安全基準で他車に劣るような開発はしていないでしょう。

画像: テスラの公開した前面フルラップ衝突テストの動画(35mph=56km/h)のキャプチャ。クラッシュゾーンは小さくてもフロントアンダーボティ(鋳造品)が細かく砕けることで衝撃を吸収するとテスラは主張。

テスラの公開した前面フルラップ衝突テストの動画(35mph=56km/h)のキャプチャ。クラッシュゾーンは小さくてもフロントアンダーボティ(鋳造品)が細かく砕けることで衝撃を吸収するとテスラは主張。

特に安全の専門家が問題視しているのは、衝突した他車や歩行者などの安全性で、EUのように歩行者安全性保護の法律やテストが存在する地域では、サイバートラックは販売できないだろうと開発者も認めています。鋭利な角は極力なくしたとはいうものの、パネルが接合するボンネットの端などにぶつかれば、相当なダメージを負いそうな視覚的な威圧感は十分あります。批判的な専門家の一人は、サイバートラックは、「3トンを優に超える重量による慣性エネルギーと、Formula1カーのようなスピード、それに加えて危険な自動運転システムを搭載して、まるで誘導のないミサイル兵器のようだ」と酷評しています。

また別の動画(AI driver)では、サイバートラックの衝突安全性への懸念もさることながら、4トンを超える重量で0→100km/hを3.3秒で加速するGMCハマーEVにはそれほどの批判がなかったことや、そもそもの話、猛烈な加速力のクルマや6.5トンの巨大なトラックを、18歳以上が普通免許だけで運転できることが危険極まりないと指摘しています。

This article is a sponsored article by
''.