開催中の「ジャパン・モビリティショー(JMS)2023」の自動車メーカーの展示では、各社それぞれに描いている未来がかなり異なって提示されています。依然として旧来のモーターショーの延長線上で、デザイン効果を狙ったコンセプトカーや数年以内に発売するEVなど「クルマ」中心の展示が多かった中で、目を引いたのがホンダのブースでした。モビリティショーの趣旨に沿って、一人乗りの電動チェアから、電動キックボードや電動バイク、eVTOL(電動垂直離着陸機)やジェット機まで展示して、多様なモビリティの可能性を印象付けています。(写真は10月25日に開催されたホンダのプレスカンファレンス)

様々なジャンルのモビリティを対等に展示

電動キックボードや電動アシスト自転車をクルマと対等に展示しているのは、2輪車を世界で1,800万台販売するホンダならではでしょう。元々ホンダの社内ベンチャー育成プロジェクトから生まれた3輪の電動キックボード「Striemo(ストリーモ)」は、倒れないバイクを作ろうというコンセプトで開発されたもので、後ろ2輪でボードの傾きが少なく、両足を揃えて乗れます。最高速20km/h で6km/h以下なら一部歩道も走れる特定小型原付モデルと一般の原付モデルの2種類がありますが、今年の2回の抽選販売では、合計400台のところ3倍以上の申し込みがありました。

画像: ストリーモの出力は430kWで車重24.9kg。簡単に折りたためる。

ストリーモの出力は430kWで車重24.9kg。簡単に折りたためる。

また、北米で11月から発売される「Moto Compact」は、アメリカホンダが開発したスーツケースサイズに収納できる電動バイクで、フロントのインホイールモーターで駆動し、レンジは20km。値段は995ドルでこちらも人気を呼びそうです。

画像: Moto Compactのレンジは20kmで3.5時間でフル充電できる(110V)。現状、日本での販売予定はないようだ。

Moto Compactのレンジは20kmで3.5時間でフル充電できる(110V)。現状、日本での販売予定はないようだ。

画像: 体を前後左右に傾けると重心の移動を感知して動く「Uni-One(ウニワン)」。足が弱くなって通常の歩行者についていけない人や、館内ツアーなどの使用を想定している。

体を前後左右に傾けると重心の移動を感知して動く「Uni-One(ウニワン)」。足が弱くなって通常の歩行者についていけない人や、館内ツアーなどの使用を想定している。

マイクロモビリティの提案では、1984年からハンドル操作タイプの電動車椅子の「セニアカー」を販売しているスズキも、「SUZU-RIDE」と「SUZU-CARGO」といった実用と遊びを兼ねた小型電動車の展示があります。また、トヨタも「e-Pallette」や電動キックボードの「C+ walk」などを出展していますが、自社ブースはこれから展開するEVで一杯で、これらは生活シーンでの利用を示す形で西館のLife & Mobilityのコーナーに集められています。その点、「クルマ」がマイクロモビリティやエアモビリティと共存したり拡張した「モビリティの未来」を一番感じさせてくれたのは、ホンダブースだといえそうです。(了)

●著者プロフィール
丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。

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