昨年8月にバイデン政権が向こう10年間に渡るEVへの補助金などで4300億ドルを支出する法案を成立させ、今年4月に米国環境保護局(EPA)が2032年のEV比率が67%に達するCO2排出ガス規制案を発表した米国ですが、ここに来て、EV市場の成長スピードの鈍化や自動車メーカーのEVシフトの減速を窺わせるニュースが続いています。金利の上昇で割高なEVの購入を見合わせる消費者も出ている模様で、現地の報道を見ながらその辺りを探ってみます。(写真はフォードのEV、F-150ライトニングの生産工場)

GM、フォードはEV生産調整へ

GMやフォードも本格的なEVシフトに投資を拡大してきましたが、EVへの需要が想定ほどでもないためか、早くも生産調整に入る動きが見られます。GMは、シボレー・ボルトEV/EUVを生産しているミシガン州オリオン工場を改装して、2025年初めからシルバラードEV(※3)とGMCシエラEVの生産を開始する予定でしたが、これを2025年末まで遅らせると先週発表しました。GMによれば、これは「投資の最適化を図り、EVの需要見通しに対応」するためということです。今のGMのEV販売の9割は3万ドルを切るシボレー・ボルトで、現行モデルは年内に生産を終えますが、モデル末期でも販売は好調でGMは次期モデルを開発します。※3:デトロイトのGMの最新工場「ファクトリー・ゼロ」ではシルバラードEVの生産を開始した。

全米自動車販売台数で不動の1位を誇るフォードのF-150シリーズのEVであるF-150ライトニングの販売も思ったほど伸びていません。同モデルのQ3の販売台数は3,503台で前年同期の半分程度でした。これは、7月末まで6週間工場をシャットダウンして年間15万台の生産体制を整えたためとフォードは説明しており、「7月の値下げで受注は6倍に増えた」とのことですが、先週、フォードは同車を生産するラインを3シフトから2シフトに減らすと発表しました。F-150ライトニングの受注状況の実際はどうなのか、第4四半期を見てみないとなんとも言えない状況です。

フォードは、2022年にテネシー州とケンタッキー州に韓国SK Onとの合弁でEVバッテリー工場を相次いで着工し、今年2月にはミシガン州に35億ドルを投じて3つ目のバッテリー工場を建設すると発表しましたが、9月に突然ミシガン工場の建設を凍結すると発表しました。中国のバッテリーメーカーCATLの技術ライセンスを受けることが問題視されたりしましたが、今年だけで45億ドルの損失を出すというEV事業の進行を調整したといえるでしょう。

画像: フォードは韓国のSK Onと合弁で110億ドル以上を投じてテネシー州とケンタッキー州に合計80gWhのバッテリー生産能力を持つ工場を建設中。2026年に200万台のEV販売を目標に掲げる。

フォードは韓国のSK Onと合弁で110億ドル以上を投じてテネシー州とケンタッキー州に合計80gWhのバッテリー生産能力を持つ工場を建設中。2026年に200万台のEV販売を目標に掲げる。

また、販売面でもEVの在庫回転率が低下しているようです。米オートモティブニュースの報道によれば、メルセデスベンツは、EQSなどの販売が重く、EVのディーラー在庫日数が82日に上っている模様です(高級車の平均は57日)。SクラスセダンやAMG-GTといったガソリン車は高い人気を維持していますが、高価なEVは動きが鈍く、販売店はメーカーにEGBなどの配車の増加や、EVの販売奨励策を求めているようです。2026年に米国販売の40%をEVにするという目標を掲げているメルセデスですが、その道のりは容易ではなさそうです。

画像: 米アラバマ工場でEQSやEQEを生産するメルセデスだが、販売はまだ期待のペースには届いてないようだ。

米アラバマ工場でEQSやEQEを生産するメルセデスだが、販売はまだ期待のペースには届いてないようだ。

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