既存の自動車メーカーが乗り込んできた意味
3社は設立の趣旨として「EVを活用した電力ネットワーク安定化に貢献するエネルギーサービスを提供」することを掲げている。さらに、2024年初頭の稼働開始から提供するサービスの概要について、以下のように説明している。
「電力会社と自動車メーカーを共通のプラットフォームで結ぶことで、電力会社に対し、各地の充電状況に関するデータなど、効率的な充電制御サービスに向けたソリューションを提供します。これにより、EVユーザーからのデマンドレスポンスの集約や、電気代が安いオフピークの時間帯での充電(V1G)、また将来的にはV2Gと呼ばれるEVバッテリーを電力ネットワーク安定化のために用いたエネルギーマネジメントの実現に取り組んでいきます」
一読してわかるのは、テスラが着々と進めてきたエネルギーマネジメント・ビジネスの領域に、いよいよ既存の自動車メーカー(いわゆるレガシーメーカー)が乗り込んできたということだ。
日本ではEVメーカーとして語られることが多いテスラだが、同社が目指しているのは単なるEV製造会社になることではない。EVを“移動する蓄電池”とみなし、エネルギーマネジメントを核とする社会インフラの導入を牽引する存在になるというのがテスラの考え方だ。一見関係がなさそうに見える自動運転技術(FSDやオートパイロット)、大型蓄電池(テスラウォール)、太陽光発電なども、社会インフラとしてすべて水面下ではつながっている。
アメリカン・ホンダモーター、BMWグループ、フォード・モーターの3社も、実はこれまで電力ネットワークの安定化を目指す「Open Vehicle-Grid Integration Platform (OVGIP)」という活動を行ってきた。電力会社と自動車メーカーが持つ情報を集約するプラットフォームを構築し、試験運用をすることで、エネルギーマネジメントに取り組んできた経緯がある。