生産工程がシンプルになり価格も下がる
端的に言ってしまえば、それぞれの物理的な特徴はもちろんだが、そもそもの考え方がまったく異なる。内燃機関時代のプラットフォームは、車台あるいはシャーシとも呼ばれて、乱暴に言えば、エンジンやサスペンションの搭載スペースとフロア部分を連結した「自動車のなかで一番大きいパーツ」だ。これがクルマの基本性能を決めてきた。
サイズはもちろんだが、運動性能や乗り心地などはプラットフォームの出来如何にかかっている。多様な商品カテゴリー(派生車種など)に対応させる必要もあり、その開発には各自動車メーカー独自のノウハウと膨大な時間、コストが費やされてきた。
対してEV専用プラットフォームというのは、読んで字のごとく既存のエンジン車用プラットフォームを転用するのではなくEVに特化したもの。床下(フロア)に大量のバッテリーを敷き詰めた構造に象徴される文字どおり「車台」である。最近では、バッテリーそのものをプラットフォームの構造部材として用いる手法も実用段階にある。
これを生産工程の視点から見ると、ボディサイズや車両タイプによっていくつかのEV専用プラットフォームを用意しておけば、あとは独自デザインのアッパーボディとパッケージングを組み合わせ、車両ごとに求められるスペックに合わせたバッテリーやモーターを搭載すればよい。
たとえば個性豊かなブランド(フィアット、アルファロメオ、プジョー、シトロエン、クライスラー、ジープほか)を数多く展開するステランティスは、今後4つのEV専用プラットフォームに集約することを発表済みだ。開発に要する時間は大幅に圧縮され、生産工程も大幅に短縮できる。現在は高価なEVも、近い将来はガソリン車と変わらない価格に下がることが期待できる。