CCSユーザーの不安を払拭し将来の価値を担保
CCS規格も使えるようにした意図は明確だ。去る6月27日に米国自動車技術者協会(SAE)が、NACSを国内標準規格化することを発表したが、現在北米で販売されているテスラ車以外のEVはCCS規格だ。
NACS規格導入を明らかにしている自動車メーカーは、NACS充電ポートが標準装備されるまで当面はアダプターを用意して対応するとしている。しかし、これではユーザーの買い控えが起きてしまい、テスラ車に流れてしまう。CCS規格の中古車の価格も大幅に下落してしまうだろう。新会社の充電器がCCS規格も使えるようにしたのは、そんな既存ユーザーの不安を払拭して、資産価値と今後の利便性を担保するのが狙いだ。
ちなみに米国充電事業の3大ネットワークである「EA(Electrify America)」、「EVgo」、「ChargePoint」も今後設置される充電器はNACS規格とCCS規格を併用したデュアルガン方式を採用することを表明しているが、決済方法など詳細は現時点でまだ公表されていない。
NACSによってテスラは車両運行データも得た
現在、米国のEVシェアはテスラが6割を占めている。米エネルギー省(DOE)によれば、急速充電器は米国内におよそ2万9000基(充電口ベースで約3万5000基)設置されているが、そのうちテスラの急速充電器「スーパーチャージャー」が1万8000基(充電口ベースでは2万2000台)と過半数を超えている。残りはほぼ「CCS」規格だが、故障も多くユーザーの不満は少なくない。
NACSの生みの親であるテスラは、2022年11月にその仕様を公開し、他社や公共充電施設以外にNACS規格の導入を促している。米国標準規格となったことで、テスラには莫大な技術使用料やロイヤリティが転がり込むだろう。
さらにテスラが運営する「スーパーチャージャー」のネットワークに参加すれば、応分の使用料/設備管理費や電気代も発生するだろう。決済システムやEVの運行状況や車両情報の管理などもテスラに頼らざるを得なくなってしまう。
今回の7社がその出費を惜しんで合弁会社を立ち上げるわけではないことは、短期間に3万基以上の独自の充電器を設置するところからも伺える。それだけの投資に見合う“なにか”が欲しいからだ。