米国市場のEVシフトもペースダウンか
バイデン政権がIRA法案で向こう10年間にわたってEVの購入やバッテリーの現地生産に巨額の支援を決めた米国はどうでしょうか。ここでも上半期のEV販売は557,330台[※4]と前年同期比+50%増加しましたが、2022年の+65%の伸びからは鈍化しています。ダントツの1位は336,892台(+30%)を販売したテスラで、依然シェア60%を維持しています。
2位は韓国のヒュンデ・KIAで38,457(+11%)、これにGMの36,322台(+365%)、VWグループの26,538台(+114%)、フォードの25,709台(+12%)が続きます。※4:米Motor Intelligenceによる。
政府の補助金(3,750または7,500ドル)の対象になるモデルはGM、フォード、クライスラーの一部車種やテスラなどわずかで、欧州メーカーはVW ID.4とBMW X5プラグインのみ、日本車やEVラインアップを増やしているヒュンデやKIAは一台も対象になりません(7月24日現在)。また、GMの対象車のSUV(ブレイザー、イクイノックス)やシルバラードEVの発売は秋以降ですし、フォードのF150ライトニングも春に生産がストップするなどの影響もあってか、BEVのシェアは昨年の5.6%→7.2%に増えたものの、欧州(16%)に比べれば半分以下です。
米国のEVの在庫日数は90日以上と1年前の3倍に増えており、これはゼロエミッション法や連邦政府の補助金があっても、一直線にEVの販売を伸ばすのは難しい現実を示しているようです。さらに、Foxconn(鴻海)を後ろ盾としていた新興EVトラックメーカーのローズタウン(Lordstown)モータースが6月に破綻し、Amazonからデリバリー用EVトラックを10万台受注しているリヴィアン(Rivian)や英アストンマーティンとの提携が決まったルーシッド(Lucid)も生産ペースが中々上がらず巨額の赤字が続くなど、EV化の前途にはまだまだ曲折がありそうです。
最大の激震地はやはり中国
中国市場で長年トップの座にあったVWが、今年第1四半期の販売でNEV(新エネルギー車[※5]メーカートップのBYDに抜かれたことは、同国市場の主役交代として大きなニュースになりましたが、このトレンドはその後も続いています。※5:EV、プラグインHV、水素燃料電池車を含む。
今年上半期の中国の自動車販売台数は、1323万9000台(+9.8%)で、そのうち中国メーカーのシェアは53.8%に達しました。NEVの販売台数は44.1%増えて374万台(シェア28.3%。+6.7ポイント)、そのうちBEVが約75%の271万9000台(シェア20.5%、増加率+31.9ポイント)となりました。まさに、NEVが中国市場を牽引しています。
モデル別のトップ10[※6]を見ると、1位はテスラモデルYで316,564台ですが、2〜4位と6位はBYDで、Song(宋)DM[※7]シリーズ(229,888台)、Yuan(元) Plus(197,825台)、ドルフィン(海豚)(162,848台)、Qin(秦)Plus DM-i(147,050台)と続きます。
エンジン車は上海VWのラビーダ(Lavida)が142,812台(前年同期比−12.3%)で7位、一汽フォルクスワーゲンのサギター(Sagitar)が118,051台(+2.8%)、日産ブルーバード/シルフィが118,451台(−9.8%)、トヨタカムリが108,749台(−17.3%)で、エンジン車は軒並み減少しています。※6:出典はマークラインズdatacenter。※7:DM(Dual Mode)はPHEV。