90kW急速充電の威力
そして、フォルクスワーゲン木更津に到着。バッテリー残量は23%となっていた。ここに設置されているPCA充電器はABBの90kW対応口が1つ。高速道路などでは大半が40k~50kWだから、それよりもはるかに効率よく充電ができるのが強みだ。専用アプリと会員登録が必要であるため、一般の人が充電に来ることはなく、その意味で待機時間のリスクは低いと考えていいだろう。
今回はフォルクスワーゲンが用意してくれたスマホを使って充電することとなった。ちなみに、ID.4購入後1年間は無償でPCAとVolkswagen充電が一定時間まで無償で使える専用カードが用意されるそうだ。
ここで見逃せないのが充電時間についてだ。多くの急速充電システムでは他の利用者への配慮もあって多くが充電時間を30分までに制限しているが、PCAではその制限を設けておらず、利用者がどこまで充電するかを任意で設定できる。つまり、時間を少し多めにかければそのまま満充電も可能になるのだ。ただ、高速で充電できるとはいえ、どのぐらいで終了できるかがわからない。そこで今回は効率よく充電できる目安と言われる80%までを、23%からどのぐらいの時間で終えられるかを体験することにした。
35分で57%充電≒iPhoneの急速充電とほぼ同じ時間感覚
結果は35分で23%→80%の充電が完了した。これは想像以上の速さだ。フォルクスワーゲン木更津でお茶をごちそうになり、少し話し込んでいたらあっという間に充電が終了していたという感じだ。これまでの経験ではこの条件で高速道路での充電器を使うと、30分で80%になることはまずない。50%を上回るか60%程度がせいぜいだろう。つまり、今回はPCA充電器による高速充電がリアルで実感できたというわけだ。
ただ、急速充電を繰り返せばバッテリーへの負担は大きくなり、それはバッテリーの寿命にも影響する。やはり普段は自宅での充電を基本とし、出掛けた時に急速充電を利用するスタイルが理想的なんだと思う。今回試乗したID.4の「ProLaunch Edition」はバッテリー容量が77kWhと大型で、その分だけ車両代もかさむ。満充電にするにも時間を要するわけだ。航続距離を気にすれば大容量バッテリーが欲しくなる気持ちはわかるが、普段使いを考えると52kWhの「LiteLaunch Edition」でも十分な気はする。
加えて、この夏に向けて本格導入されるID.4の標準モデルは、ソフトウェアのアップデートで航続距離の改善も図られているとのこと※。そんな意味合いも含めると、ますます“Lite”でも十分なのではないかと思うのだ。いずれにしろ、標準モデルの試乗を心待ちにしたいと思う。※試乗車はアップデート済みだった。
フォルクスワーゲン ID.4 Pro 主要諸元
●全長×全幅×全高:4585×1850×1640mm
●ホイールベース:2770mm
●車両重量:2140kg
●最高出力:150kW(204ps)
●最大トルク:310Nm
●バッテリー総電力量:77.0kWh
●WLTCモード航続距離:618km
●駆動方式:RWD
●タイヤサイズ:前235/50R20、後255/45R20
●著者プロフィール
会田 肇(あいだ はじめ)1956年、茨城県生まれ。大学卒業後、自動車雑誌編集者を経てフリーとなる。自動車系メディアからモノ系メディアを中心にカーナビやドライブレコーダーなどを取材・執筆する一方で、先進運転支援システム(ADAS)などITS関連にも積極的に取材活動を展開。モーターショーやITS世界会議などイベント取材では海外にまで足を伸ばす。日本自動車ジャーナリスト協会会員。デジタルカメラグランプリ審査員。