日本発のEVとして2023年初頭に大きな話題となった、ソニー・ホンダモビリティ(SHM) の「AFEELA(アフィーラ)」。発表から半年が経ち、今のところ表立った動きは見えてこないが、2025年の発売を目指して計画は粛々と進んでいるはずだ。そのアフィーラが誕生するまでにはどんな考えがあったのか。発表直後にアフィーラで目指す新たなモビリティ像について、SHMの川西泉社長兼COOに伺った話を改めて振り返ってみた。

「技術はあくまでも手段であるという認識は大事」

ソニー・ホンダモビリティは2022年10月、ソニーとホンダが50%ずつ出資して設立した新会社だ。そのSHMが北米・ラスベガスで開催された「CES2023」において、2025年前半にも北米で発売を予定するプロトタイプを発表した。それは世界中に驚きをもって伝えられたが、そのとき川西泉社長兼COOに伺った、未公開のインタビューをお伝えしたい。

Q:EV時代では新興メーカーの参入が増えてるのは予想されており、実際CES2023ではベトナムやトルコから新興EVメーカーが出展していました。そうした中でソニーが発揮できるアドバンテージはどこにあるのでしょうか。

川西泉氏(以下敬称略):SHMを離れてソニーの立場で答えると、「ソニーは“クリエイティブ・エンタテインメントカンパニー”である」との言い方をしています。ソニーはエンタテインメントの会社。そこにテクノロジーを使っていくのが基本的なスタンスです。2020年のVISION-Sを発表した時は、世の中のトレンドがモバイルという大きなトレンドからモビリティという新しい領域に移っていくのではないか。そんな思いが背景にありました。

画像: 「AFEELA」の第一号プロトタイプ。オーソドックスなセダン型とし、そこにソニー流のエンタテイメント技術が盛り込まれていた。

「AFEELA」の第一号プロトタイプ。オーソドックスなセダン型とし、そこにソニー流のエンタテイメント技術が盛り込まれていた。

その理由として、大きなライフスタイルを変えていくトレンドがモバイルで起きたように、モビリティでも技術の発展が生まれていると考えたのです。ソニーは「ウォークマン」で音楽を外に持ち出し、移動空間で音楽を楽しむ体験へと拡張しました。それがソニーの価値でもあるんです。今回、クルマという商品を用いて、自分が移動する中でその時間でエンタテインメントを楽しむ時間に変えていく。これはソニー側からすればこれまで提供してきたことに通じることでもあると言えます。

Q:現在はテクノロジーカンパニーがコンテンツに投資してコンテンツホルダーになるのが業界の流れになっています。それはテクノロジーがコンテンツを求めているのか、あるいはコンテンツがテクノロジーを求めているのか、どっちなんでしょうか。

川西:それはどちらとも言えますね。技術はあくまで手段であって、その進化も手段であって目的ではありません。質問はAmazonとかNetflixを指しているのだと思いますが、彼らは自分たちでコンテンツを作ってはいますが、実質的にはディストリビューターであると考えています。むしろ、彼らはソニーにとって制作過程でのパートナーでもあり、同時にソニーの機材を使うお客様でもあります。それはAppleも同じなんです。

コンテンツを作る撮影機材から作って提供し、“エンドtoエンド”のソリューションを持っているのがソニーです。そして、この得られる体験として移動する時間/空間というものを、自分たちが持っているアセットを使いながら実現していこうというのが今回のテーマなんです。ただ、それでも既存のアセットを使っているだけであって新しくはない。そこに相手のテクノロジーを含めて新たなエンタテインメントを創出していくことがこれからの課題だと思っているところです。

画像: ダッシュボードの左右いっぱいにインストールされたディスプレイ。ステアリングはディスプレイ視認を邪魔しない”ヨーク型”とした。

ダッシュボードの左右いっぱいにインストールされたディスプレイ。ステアリングはディスプレイ視認を邪魔しない”ヨーク型”とした。

Q:メルセデスベンツやBMWなどライバルがどんどんエンタテインメント機能を拡充していますが、それはソニーにとってもプラスとなるというわけですか?

川西:結果的にソニーが作ったコンテンツやゲームがビジネスになっていますからね。ソニーとしては、そういった流れが生まれているのは良いことだと思ってます。それがより多くの人により良いコンテンツとして楽しんでもらえるのは企業としての価値でもあると言っていいでしょう。もちろん、コンテンツは完全にオープンなものなので、他ブランドのコンテンツにも対応していくつもりです。SMHでコンテンツを提案するかは、広義の意味ではあるかもしれませんが、現時点では何とも言えません。

画像: フロントグリルに相当する位置に装備された「Media Bar」。周囲とのコミュニケーションが図れるよう様々な表示ができる。

フロントグリルに相当する位置に装備された「Media Bar」。周囲とのコミュニケーションが図れるよう様々な表示ができる。

とはいえ、新しい価値をSHMのクルマを通して見せられる立場ではありたいし、そういうことにチャレンジしていくべきだと思います。たとえば、今回のプロトタイプには「Media Bar(メディアバー)」を搭載しましたが、それをどういう価値で作っていけばいいかは考えていく必要があるでしょう。それが可能なら、こんなこともできるよね、というふうに、サンプル的なものは考えていくべきだと思っています。いろいろな提案をすることで、いろいろな人が様々なアイデアを出してそこで盛り上がれるといいなと考えています。

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