昨年12月の発表以来、瞬く間に世界中に広がった生成AI(Generative Artificial Intelligence)のチャットGPTですが、今度は、メルセデス・ベンツが車載インターフェースのMBUXにこれを組み込み、6月16日から米国で3カ月間、90万人のMBUX搭載車ユーザーに試験提供すると発表しました。多くの人工知能の専門家が革命的な進化と呼ぶ一方で、著作権や個人情報保護の観点などから、科学者や行政府からも何らかの規制が必要という声も上がっています。果たしてチャットGPTでクルマはどう変わるのでしょうか。

ステランティスも生成AIの搭載を予告

トヨタ、フォルクスワーゲンに次ぐ世界第3位自動車メーカーであるステランティスも、「モビリティーテックカンパニー」に変身することを掲げており、「インテリジェント・ビークル」の実現に力を入れています。 同社のCTO(最高技術責任者)のネド・クーリック氏は、マイクロソフトやトヨタ、Amazon(Alexaの開発を主導)をへて、2021年にステランティスに入りましたが、同社のビークルシステムアーキテクチャを、①STLA Brain(ブレイン)、②STLA SmartCockpit(スマートコクピット)、③STLA AutoDrive(オートドライブ)の3つの領域に分け、ブレインはアマゾンクラウドと、スマートコクピットはアマゾンとフォックスコン(Foxconn)と、自動運転はBMWとウェイモ(Waymo)との協力を打ち出しています。

クーリックCTOは、大規模言語モデル(large language model)を使用した生成AIは「本物のAI」であるとして、同社の10以上のアプリケーションに今後採用するとしています(6月にパリで開催されたオートモティブニュース・ワールドコングレス・ヨーロッパでの発言)。

画像: 4つの「車両プラットフォーム」と3つの「テックプラットフォーム」をマトリックスで説明(ステランティスホームページより)。

4つの「車両プラットフォーム」と3つの「テックプラットフォーム」をマトリックスで説明(ステランティスホームページより)。

そもそもチャットGPTはどのくらい使えるのか?

すでに世界で何億もの人が試したというチャットGPT(GPTはGenerative Pre-trained Transformerの略)は、日本でも多くの方が試してみたと思います。筆者もたまに使っていますが、今回は改めてお題を与えてその実力を試してみました(使用したのは2021年9月までの情報を参照するという無料版)。

2025年開催の大阪万博で試験運用されるとして最近よく話題になる「空飛ぶクルマ」ですが、試作機のニュース映像などをみて、「タイヤがないのに道路も走るの?」と思われる方もいるのではないでしょうか。

そこでチャットGPTで、「空飛ぶクルマとは」と聞いてみると、
「空飛ぶクルマは、地上を走行できるだけでなく、空中でも飛行することができる乗り物です。このコンセプトは、映画やSF作品などの創作物でよく見られますが、現実の技術としてはまだ実現していません。ただし、現在、空飛ぶクルマの研究や開発が進んでいます。いくつかの企業やスタートアップが、個人用の小型飛行機や垂直離着(VTOL)機の開発に取り組んでいます。これらの車両は、一般の道路を走行できるだけでなく、空中での飛行も可能です」と回答しました。これだと道路を走行できることが前提だと考えてしまいますね。

画像: ドイツのUAM(アーバン・エア・モビリティ)のスタートアップ「ボロコプター(Volocopter)」は来年のパリ五輪に合わせて「空飛ぶタクシー」サービスを開始する予定。またシンガポールでも3年以内に就航させるという。写真の「ボロシティ」の定員は2名。

ドイツのUAM(アーバン・エア・モビリティ)のスタートアップ「ボロコプター(Volocopter)」は来年のパリ五輪に合わせて「空飛ぶタクシー」サービスを開始する予定。またシンガポールでも3年以内に就航させるという。写真の「ボロシティ」の定員は2名。

ではGoogleで「空飛ぶクルマとは」を検索するとどうでしょうか。
「空飛ぶクルマとは、電気により自動で空を飛び、垂直離着陸が可能な飛行機とドローンの間に位置する新たなモビリティを指し、正式には『電動垂直離発着型無操縦者航空機(eVTOL:electric Vertical Take-Off and Landing)』と呼ばれる」

「空飛ぶクルマと呼ばれることが多いが、現在では、車道と空の双方を走行する機体というよりは空の移動を中心に据えた検討が進んでおり、“クルマ”ではなく航空機として分類されている。単に空飛ぶクルマと呼ばれるだけでなく、eVTOL、Flying car、UAM(Urban Air Mobility)などとも呼ばれることがある」。(出典:「ビジネス+IT」)

このように説明するサイトにすぐにあたります。またWikipediaでも、「陸上での自走が可能かは問わない」、「空飛ぶタクシーとも呼ばれる」とあります。

画像: 米スタートアップ「アーチャー(Archer)」がステランティスの出資と協力を得て、年間最大2300機の製造を目指すe-VTOL「ミッドナイト(Midnight)」 最高時速240km/h、航続距離160kmで操縦士と4人の乗客を載せNYマンハッタンと対岸のニューアーク空港を10分で結ぶ。すでにユナイテッド航空から100台の注文があるという。

米スタートアップ「アーチャー(Archer)」がステランティスの出資と協力を得て、年間最大2300機の製造を目指すe-VTOL「ミッドナイト(Midnight)」 最高時速240km/h、航続距離160kmで操縦士と4人の乗客を載せNYマンハッタンと対岸のニューアーク空港を10分で結ぶ。すでにユナイテッド航空から100台の注文があるという。

こうしてみると、「空飛ぶクルマ」の質問のケースでは、チャットGPTの「道路を走る」とする回答は実際の開発状況と乖離していますし、一回ワードを打ち込むだけで複数の情報にあたれる検索の方が便利で、出典もわかって信頼できます。ただし、チャットGPTでも、「空飛ぶクルマとヘリの違いは?」、「空飛ぶクルマを開発する理由は?」と質問を重ねると、ヘリとの違いを箇条書きに列挙したり、「災害支援や道路インフラ貧困地への輸送」などを目的に挙げたりして理解を深めてくれます。チャットGPTは、就活生のエントリーシートやゼミのレポート作成などには絶大な威力を発揮するそうですから、用途によっては今でも実用に十分足るのでしょう。

This article is a sponsored article by
''.