日本国内に設置されている急速充電器は、いわゆるCHAdeMO(チャデモ)規格で統一されており、車両メーカーや機器メーカーが異なっていても使用できる(独自規格のテスラ車はアダプターを装着)。現状はCHAdeMO1.0と1.2が混在しているが、これからどうなっていくのだろうか。

CHAdeMO 1.0はもはや“中速”充電器か

急速充電器、CHAdeMOの主流はいまも1.0規格の50kW基となっている。125A/500Vの設定で30分間に25~30%前後の充電が可能とされている。ようやく本格的な導入が始まったCHAdeMO 1.2では、EVバッテリーの高出力化・容量増加にあわせて400A/500Vに強化され、最大出力は90kW〜150kWへと大幅に増加している。今後は1.2規格基への置き換えや新設が一挙に増えそうだが、解決すべき課題もあるようだ。

■CHAdeMO 1.0規格 最大出力:50kW(125A×500V)
国内に整備されている急速充電器の大半がこちら。単純な掛け算(125×500)では最大出力は62.5kWになるが50kWに抑えられているのは、想定充電時間と当時の車両に搭載される電池の能力などを総合的に判断した結果だ。

登場から時間がたっており、また国内仕様車のシステム電圧を400Vに設定しているEVが多いため、国産車/輸入車を問わず安定・安心して使える。もっともEVの高性能化が急速に進んでいる現在、より高出力な急速充電器(CHAdeMO 1.2)への置き換えが進んでいる。

また、地方のコンビニや道の駅などに設置されていることが多い最高出力15kW~30kWの急速充電器(“中速”充電器と呼ぶこともある)は、その老朽化が問題になってきた。コネクターや通信規格など仕様はCHAdeMO 1.0規格に準じているが、そもそも低出力ゆえに充電に時間がかかるのは致し方ないところ。設置されてから時間が経っているので故障やメンテナンスが行き届いていないケースが増えている。

■CHAdeMO 1.2規格 最大出力:200kW(400A×500V)
EVの高性能化に伴い、最高出力90kW級の高出力型急速充電器の設置が始まっている。もっとも、充電の速度は車両側のバッテリー充電容量や充電制御に左右される。あくまで(電流の)受け入れ可能な範囲の速度でしか充電できないことは理解しておく必要がある。

結果的に90kW基でも50kW基でも充電スピードがあまり変わらなかったり、かえって遅くなってしまうこともあり得るのだ(この問題は車両側のソフトウエアをアップデートすることで解消することもある)。

ドイツメーカーによる充電施設は高出力化が進む

また、SA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)の一部で設置が進む90kWマルチコネクター電力共有タイプの充電器(6口基、4口基など)を利用する際にも、留意しておくべきポイントがある。

たとえば、最高出力90kWでシステム総出力200kWに設定された6口基の場合、200kWを6台でシェアすることになるのだ。仮に6台同時に充電を始めたとすると、単純計算では台あたり33.3kWとなり一般的な50kW基よりも遅くなってしまう。最高出力90kWで同時に充電できるのは2台まで(90kW×2台で180kW)。

3台目以降はせいぜい20~40kWしか利用できず、以後充電するクルマが増えるたびに充電出力は落ちていくことになる。もっとも、実際には複雑な制御が入っているので充電出力はコネクターごとに刻々と変化していくのだが。最大出力90kWという数字を鵜呑みにすると、30分経っても思ったほど充電できていなかったという結果になることがあるのは、知っておくべきだろう。

一方では、さらに高出力の150kW基も登場している。メルセデス・ベンツEQモデル、ポルシェ タイカン、アウディetron GTなど高出力・大容量バッテリー搭載車向けに設置が進んでいるのだ。

画像: 東京・飯田橋にあるポルシェ ターボチャージングステーション。

東京・飯田橋にあるポルシェ ターボチャージングステーション。

たとえばポルシェ/アウディのディーラーでは、2023年央からは最大出力を150kWに上げた「ポルシェターボチャージャー」、「アウディ ウルトラ チャージャー」の運用が始まる(2023年3月末時点では90kWで運用中)。

ポルシェタイカン、アウディetron GTはともにシステム電圧は800Vで設計されている。欧州では「CCS2(ユーロコンボ規格)」で今後主流になる350kW級急速充電を見据えており、150㎾でも車両側に十分以上の受け入れ能力がある。

両車は現在国内で主流の50kW基では他のEVと同じく30分で約27%の充電しかできないが、150kW基ならば同じ時間で約81%も充電できる。すでに運用を開始しているメルセデス・ベンツのディーラーを始め、今後はプレミアムブランドを中心に150kW基の導入が進んでいくことになるだろう。

CHAdeMOの新規格は確定しているが普及は見通せない

すでにCHAdeMO協議会では、充電時間の短縮およびEVの性能向上に合わせた新規格を定めている。とは言え、現状国内を走るEVは一部のプレミアムブランドを除き(国産車/輸入車を問わず)、50kWオーバーの充電にほとんどが積極的な対応をしていない。よく言われているように結局は「鶏が先か卵が先か」になっているのが実情だ。

■CHAdeMO 2.0
最大出力:400kW(400A×1000V)
最大電圧を1000Vに拡張し、最大出力400kWが可能になるが、日本の電気事業法では600V以下を低圧受電と定めており、1000Vは高圧受電となってしまうためCHAdeMO 2.0国内導入のハードルは高い。CHAdeMO 1.0や1.2とコネクターや通信規格の互換性はあるものの、現時点ではまだ1000Vに対応したEVは販売されていない。

■CHAdeMO 3.0
最大出力:900kW(600A×1500V)
日本と中国を中心にまとめられた次世代超高出力充電規格が「ChaoJi」であり、日本では「CHAdeMO 3.0」と呼ばれている。1.0~2.0のCHAdeMOは下位互換性があるが、3.0ではコネクターの形状が全く異なり、ガンコネクターが小型化し接続ケーブルの径も細くなる。

航続距離を伸ばし、充電時間を短縮するには急速充電器のさらなる高出力化が不可欠であると同時に、車両側の対応も必須であることはご理解いただけただろう。

CHAdeMO1.0からようやく1.2への移行が始まりつつあるが、その先の2.0や3.0に進もうとしても遅々として進まないのが現状だ。欧米が先行するなか、日本のEVがガラパゴス化しないことを祈るとともに、自動車メーカー、充電器メーカーや運営事業者、そして何より行政の奮起に期待したい。

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