5年に一度実施される総務省統計局の調査(平成30年度)によれば、日本の住宅は約8割が戸建て、マンションなどの共同住宅は2割弱。首都圏ではマンション比率が3割を超えている。人口ベースで見てみると、東京都では6割がマンションなどの集合住宅に居住しているという。この事実が日本でのEV普及が伸び悩んでいる一因ともなっている。既存のマンションに充電施設をスムーズに設置する方法はないのだろうか。

分譲マンションに充電設備を導入する際の障壁

自己所有の戸建て住宅ならば、EVやPHV用の充電設備は自由に設置できる。一方で、マンションなどの集合住宅に新たに充電設備を導入しようとしても容易ではない。とくに分譲マンションの駐車場は、そのほとんどが住民の共有設備だ。

ゆえに充電設備を設置するには、管理組合の承認や総会決議が必須になる(賃貸マンションの場合はオーナーの意向次第だが……)。仮に合意が得られたとしても、設置費用や料金徴収を含む運営方法をどうするかなど課題が山積している。

とはいえ、政府も2035年には乗用車の新車販売における電動車の比率を100%にする目標を掲げている。すでにHV(ハイブリッド車)は当たり前になりつつあるが、今後は充電が必要なEVやPHEVの販売比率も飛躍的に高まり、マンションといえども充電器の設置は必須となるだろう。

すでに東京都では、新築ビルやマンションに充電器の設置を義務化する改正条例を可決、2025年4月より施行されることになった(※年間に供給延床面積が2万平方m以上の建物を供給する「特定供給事業者」による建物に適用)。

そんな状況なので、すでに築年数を重ねているマンションでも、資産価値の向上という観点からも充電設備の設置を検討すべきタイミングに来ていると言える。国や自治体による手厚い補助金が用意されているのも、いま検討を急ぐ理由でもある。

スムーズな合意形成を目指すなら初歩的な知識の共有を

充電施設の設置までのプロセスを大まかに言えば、まずは住民の代表で構成される理事会で導入のための原案を作成する必要がある。議論をスムーズに進めるためには、事前に電動車に関する初歩的な知識を理事会メンバーで共有しておくことも必要だろう。

そのうえで、充電器を設置する場所や機種の選定、管理・運営方法、電気代の徴収方法など細かく話し合ったうえで、総会で決議する。その際には充電器を利用しない住民にも納得してもらえるように、とくに導入初期費用と電気料金の徴収方法は念を入れて検討しておきたいものだ。

ひと口にマンションの駐車場と言っても、その形態はさまざまだ。戸建て住宅のような平置き駐車場もあるが、二層または三層式の機械式、さらに都市部ではスペース効率を優先した立体式も少なくない。

駐車場の敷地に余裕があれば、専用の充電スペースを用意して交代で使う(シェアする)という選択肢がある。充電用スペースがない、あるいは充電のたびにクルマを移動させるのは不便だという声がある場合には、充電器を占有区画ごとに取り付けることもできる。

戸建ての駐車場でよく見かけるタワー式のスタンドタイプ(200V)のほか、コンパクトな壁付け式コンセントタイプの充電器(100V/200V)もあるので、こちらは機械式や立体式の駐車場にも対応できる。

いずれの場合でも、設置する充電器は「普通充電器」になるはずだ。出力3〜6kW前後と低めで充電に時間はかかるが、コンパクトで取り付け場所は最小限、充電器の本体価格も工事費用も一般的にはさほどかからない(ただしマンションによっては共用部分の電気容量が不足することもあるので、契約電力・電気容量を確認する必要はある)。

政府や自治体が用意しているいわゆる「充電インフラ補助金」を活用すれば、(充電器の種類や設置場所によって変動するが)1台あたりの実質的な負担額は30万円台に収まるだろう。

自治体や事業者などの専門家の助けを借りるのが早道

とは言え、分譲マンションなどの集合住宅では戸建てに比べて面倒な手続きや運営が必要なのは事実だ。すべてを管理組合の理事会や住民だけで行うのは、負担が大きすぎて現実的ではない。

一部の自治体では充電設備導入に係るアドバイザーの無料派遣を行っているし、導入の諸手続きから実際の運営を代行する事業者も多数参入している。とくに後者では、総会決議に必要なプレゼンテーションから、充電器の機種選定や設置場所、補助金の活用方法など初期原資の考え方、利用のルール作りや料金徴収方法さらにメンテナンスまで一括して請け負うところも増えている。

2023年3月9日にはエネチェンジ株式会社が「マンション専用車室ゼロプラン」を発表している。こうした事業者の利用を検討する価値は大きい。充電設備の導入に二の足を踏んでいる管理組合の役員さんは、一度相談してみることをお勧めする。

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