世界最大の通信機器メーカーであり米中貿易摩擦の主役
ファーウェイ(HUAWEI)といえば、いまの日本ではスマートウオッチやウェアラブル端末、そしてかつての格安スマートフォンくらいしか思い浮かばない。しかし、その実態は世界有数の通信機器メーカーであり、ICTベンダーでもある。もっとも、米中貿易摩擦が過熱するなか、元中国人民解放軍関係者による創業という出自も関係して、2018年以降は米国のエンティティ・リスト入り。事実上の締め出しが行われている。追従した西側諸国でも、(日本を含め)さまざまな制限が加えられている。

広東省深圳市のファーウェイ本社。通信機器メーカー大手にして世界有数のICTソリューション・プロバイダーだ。
中国国内では依然としてスマホ事業やICTソリューション事業が好調であるものの、次なる事業の柱として打ち出したのが、スマート自動車関連事業である。ユニークなのは「決して自動車メーカーにはならない」と宣言していること。そして、自社の事業モデルを3つに分割していることだ。
■事業モデルその1:Tier 1 サプライヤー
LiDAR、ミリ波レーダー、ECUコントローラー、ヘッドアップディスプレイなど、主に自動運転領域のパーツサプライヤー。
■事業モデルその2:共同開発
自動車メーカーとの共同開発による自動運転関連ソフトウエアの開発、電動パワートレーン(=「Drive ONE」)の開発、ADASシステム(=「ADS」)、車載OS(=「Harmony OS」)などスマートコクピット用にパッケージ化して提供する。同社が関係したソリューションには「HI:Huawei Inside」のロゴが添付される。
■事業モデルその3:新EVブランドの創設
自動車メーカーと共同して新ブランドを立ち上げ、スマートコクピットにとどまらず、販売チャンネルやマーケティング領域にも関与する。現在、ファーウェイが主導して立ち上がったEVブランドは以下の5つ。これらは「鴻蒙智行(Harmony lntelligent Mobility Alliance=HIMA)」と呼ばれるブランド連合を形成している。
※左側がブランド名、右側が提携先自動車メーカー
・AITO(問界)=賽力斯(SERES)
・Luxeed(智界)=奇瑞汽車(CHERY)
・Stelato(享界)=北京汽車(BAIC)
・Maextro(尊界)=江淮汽車(JAC)
・(尚界)=上海汽車集団(SAIC)

2023年12月に発表されたAITOの高級SUV「M9」。高額車にも拘わらず2024年12月時点で累計販売台数が19万台を突破した。
上海汽車との提携は2025年2月21日に発表され、新たなブランド名は「尚界」と発表された(欧文ブランド名はまだ公表されていない)。主に現地での中価格帯をターゲットに新ブランドEVを投入するという。また「尊界(Maextro)」は初の市販車となる「S800」を2024年11月26日にエクステリアのみ初公開。2025年4月25日には上海モーターショー会場で内装とともに、価格も発表され70万8000元(約1415万円)から101万8000元(約2035万円)という高価格帯が世界中で話題となった。