郷に入っては郷に従うことが求められる、巨大ガラパゴス市場
ここ数年で著しくシェアを落としてきた日本メーカー勢だが、2025年に入って盛り返しの兆しが見えてきた。その原動力となっているのが、中国市場に特化した開発体制に大きく舵を切ったことだ。たとえば2025年3月6日に発売されたトヨタのbZ3Xは、予約受付開始1時間で1万台を超える受注を獲得。トヨタEVながら価格を抑え(10万9800元:約225万円~)、中国スタートアップでありトヨタも投資するmomenta(モメンタ)と共同開発したE2EのNOAを採用していることが高く評価されている。

トヨタでさえ苦戦していた中国EV市場で久々のヒットとなった「bZ3X」。momentaと共同開発したE2EのNOAを搭載しながらも価格を抑えた。
そして同年4月23日から開催された上海モーターショーにて、トヨタは現在開発中の新型EVフラッグシップセダン「bZ7」を公開するとともに、ファーウェイの「Harmony OS」の採用を予定していると説明。トヨタ車がファーウェイの技術を導入する初の事例となりそうだ。

2026年の発売に向けて開発中のフラッグシップEVセダン「bZ7」。トヨタ初のHarmony OS搭載車になる。
トヨタの佐藤恒治社長は、現在の中国EV市場とのかかわりを以下のように語っている。
「バッテリーEVは、グローバルに全体的な議論をしていた時代から、明らかに中国の風速は速く、単なる電気自動車ではなく、知能化とセットでモビリティの進化を促していくものになってきている。その風速の速いところに身を置き、先端技術をしっかり取り込みながら、モビリティの構造改革を牽引するプロジェクトとして進めていく。そういうことをもっと深くやっていきたい。(2025年5月8日に開催された2025年3月期決算説明会にて)」

中国市場は「知能化とセットでモビリティの進化を促していくものになってきている」と語る佐藤社長。
換言すれば、いまや中国は欧米型の自動車トレンドとは異なる巨大なガラパゴス市場だ。トヨタでさえ「郷に入っては郷に従う」ことが求められている、中国新車市場を牽引するのはほかでもないファーウェイの技術である。それがゆえに、中国国内ではファーウェイによる寡占を危惧する声すら上がり始めているという。
とはいえ、ファーウェイとの関係を持たずに中国でビジネスを展開するのは、今後さらに難しくなることは論を俟たない。一方で、ファーウェイの技術を搭載した車両を西側諸国に輸出しようとすればさまざまな制約が出てくるだろう。開発コストの抑制が可能となる一方で、輸出市場を失うことにもなりかねない。SDV化が進むと、経済安全保障の課題にも取り組まざるを得なくなるのが悩ましいところではある。



