2025年3月26日、トランプ大統領は、米国に輸入するすべての乗用車に一律25%の関税を課す大統領令に署名しました。4月2日から発効し、翌3日から徴収が始まります。また、1カ月の猶予を置いていたUSMCA(※)対象のメキシコとカナダからの輸入車についても、米国産部品の割合を引いた率で課税するほか、エンジンやトランスミッションといったパワートレーンの部品や電装パーツなども対象となります。経済への影響の大きさから25%といった高率の課税はしないのでは、という関係者の見方を覆す今回の決定は、自動車産業や米国市場にどういう影響を与えるでしょうか。(写真:スバルが日本から米国に輸出するフォレスター)
※米国・メキシコ・カナダ協定

USMCAも除外されず、デトロイト3にも打撃

今回の自動車関税は、北米自由貿易協定のもとでメキシコとカナダでの生産を拡大してきた米国、日本、ドイツ各社の輸入車の扱いも焦点ですが、USMCAの基準を満たした自動車製品(※)についても、米国産部品の割合を引いた形で課税するとトランプ大統領は言明しました。

※北米(米国、カナダ、メキシコ)生産の比率が75%以上であることが関税ゼロの条件。他にも鉄鋼とアルミ製品の70%以上、エンジンや変速機が北米産など条件がある。

GMとステランティスは米国販売の約45%の車両を、フォードは20%の自動車を主にメキシコやカナダから輸入しており、これらにも非米国産率に応じて関税がかかることになります。また、ジェッタやティグアンなど米国販売の40%超をメキシコ工場から輸入しているフォルクスワーゲンも大きな影響を受け、もともとUSMCAの基準を満たしていないアウディの主力モデルQ5や、BMWの2シリーズや3シリーズは27.5%の関税の対象になります。

米国の金融機関やアナリストはこぞって、GMやフォード、ステランティスの営業利益が軒並み吹き飛ぶと警告し、BMWやメルセデス・ベンツも営業利益が2%以上低下するとの予測を出しました。関税の発表を受けてデトロイト3の株価は、翌日の取引開始後、GMが8%、フォードが4.5%、ステランティスが2.6%それぞれ下落しました。

画像: 2024年米国で55万台が販売されたGMのフルサイズピックアップトラック「シボレー シルバラード」もメキシコで多くが生産される。(写真出展:シボレーUSA)

2024年米国で55万台が販売されたGMのフルサイズピックアップトラック「シボレー シルバラード」もメキシコで多くが生産される。(写真出展:シボレーUSA)

車両価格は6000〜1万ドルの上昇に?

今回の関税によって、自動車販売価格は6000ドルから1万ドルの値上げを余儀なくされるとも予想されています。これを受けてコックス・オートモーティブはさっそく、2025年の米国自動車販売台数の予測を1630万台から1560万台に引き下げました。すでに、トランプ大統領の関税政策への懸念から米国株式市場は低空飛行しており、また消費者マインドも冷え込んできています。

少なくとも短期的には、車両価格上昇により市場が冷え込み、生産が停滞、雇用も脅かされるというのがアナリストの大半の見方です。メキシコ生産のシボレーやダッジのピックアップトラック、そして欧州の高級車は、コロナ禍や半導体不足を要因とする大幅値上げと同様に、より高額な値札をつけられてショールームに並ぶでしょう。

トランプ大統領自身、「雇用の増加に多少時間がかかるかもしれないが、新たな工場が建設され、生産が増えて、米国の自動車産業の黄金時代が再来する」と自信満々です。また、「この関税は外国に不当に搾取されてきたマネーを取り返すもので、初年度に1000億ドル以上の税収増を米国政府にもたらす」と、ここでも米国の利益を強調するのを忘れませんでした。

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