2025年3月26日、トランプ大統領は、米国に輸入するすべての乗用車に一律25%の関税を課す大統領令に署名しました。4月2日から発効し、翌3日から徴収が始まります。また、1カ月の猶予を置いていたUSMCA(※)対象のメキシコとカナダからの輸入車についても、米国産部品の割合を引いた率で課税するほか、エンジンやトランスミッションといったパワートレーンの部品や電装パーツなども対象となります。経済への影響の大きさから25%といった高率の課税はしないのでは、という関係者の見方を覆す今回の決定は、自動車産業や米国市場にどういう影響を与えるでしょうか。(写真:スバルが日本から米国に輸出するフォレスター)
※米国・メキシコ・カナダ協定

EUは深く憂慮。ドイツは断固とした報復も示唆

域外からの輸入車に10%の関税をかけているEUも回避の条件を探っていましたが、相互関税の場合の2.5倍も課されることになります。2024年のドイツから米国への輸出台数は44万6000台で、これはBMW、メルセデス・ベンツ、アウディ、ポルシェの米国販売台数の合計(94万8000台)の半数近くに上ります。イギリス(ジャガーランドローバー、MINI、ベントレー、アストンマーチンなど)は9万6000台、スウェーデン(ボルボなど)は、8万7000台を輸出しており影響は甚大です。

今回の発表を受けて、EUや欧州自動車工業会(ACEA)は、「失望し、影響を深く憂慮する」と声明、ドイツのロバート・ハーベック経済相は、「引き下がることなく、断固とした対抗措置をとるべき」とコメントしました。米国工場から年間100億ドル分を海外に輸出して貿易収支に貢献しているBMWは、もし米国産車両の欧州への輸入に報復的関税がかかれば、際限のない貿易戦争になると懸念を表明しました。

チキンタックスの成功体験

米国の自動車関税としては、軽量積載トラックに分類されるピックアップトラックや商用バンに対する25%の関税、通称「チキンタックス」がよく知られています。実施は1963年に遡り、ジョン・F・ケネディ大統領の暗殺を受けて後任となったリンドン・ジョンソン大統領が、欧州諸国が米国製の安価な鶏肉に対して発動した輸入規制に対する報復関税として導入されたものです。当時の米国で人気が高まっていたフォルクスワーゲン トランスポーター(タイプ2)、そしてブランデーやジャガイモ澱粉などをターゲットにしたものでした。

画像: フォルクスワーゲンのバンやピックアップトラックが1960年代の米国で人気を博し、チキンタックスの標的とされた(写真出展:フォルクスワーゲンUSA)

フォルクスワーゲンのバンやピックアップトラックが1960年代の米国で人気を博し、チキンタックスの標的とされた(写真出展:フォルクスワーゲンUSA)

チキンタックスは1980年代、米国で人気を集めた日本製小型ピックアップトラックの輸入を抑制する効果も上げ(米国生産に移行、もしくは撤退)、これを受けて日本車メーカー各社は乗用車に注力しました。その結果、デトロイト3は、乗用車的な装備を持つ中・大型のピックアップトラック市場を開拓し、これを主力マーケットにするに至りました。現在25%の関税を払って輸入されているトラックはわずかで、チキンタックスは成功例として米国政府にも認識されているでしょう。

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