双方の立場に大きな隔たりがあった米・ウクライナ会談
関税の話に入る前に、ホワイトハウスの会見の決裂の模様を振り返ってみます。最初は、トランプ大統領がゼレンスキー氏の肩に手をやるなど和やかな雰囲気で、首脳会談に先立った握手と挨拶の交換をメディアに公開するいつものパターンに見えました。停戦へ道を開くウクライナの鉱物資源の取引協定の調印を控えて上機嫌だったトランプ氏は、招き入れたメディアの質問を受け続けました。
異変が起こったのは、40分近くが過ぎてポーランドの記者が「米国はロシアに同調（align）しすぎているのではないか」と質問した後でした。トランプ氏が、「ロシアではなく米国と、世界と同調している」と回答した後、ヴァンス副大統領が「トランプ大統領の外交の成果だ」とボスを持ち上げたことに、ゼレンスキー氏が「どの外交のことだ」と反応してしまったのです。
ゼレンスキー氏にとっては、ウクライナの安全保障が米国によって約束されずに停戦に合意することに不安があり、2者会談ではその保障をなんとか取り付けたい思いがあったはずです。それを議員歴わずか2年の副大統領でウクライナを訪問もしていないヴァンス氏が、「外交の成果」などと嘯くのに苛立ったのでしょう。やや感情的になったゼレンスキー氏が、「ロシアはこれまでも独仏を交えて締結した停戦協定を何度も破った」と反論し、ヴァンス氏も「この場でその話を延々と持ち出すのは失礼だ」と激しい応酬になりました。
さらにゼレンスキー氏が、「米国は有難い海に隔てられて今は（ロシアの）脅威を感じないだろうが、そのうち分かる」と返した言葉が、今度はトランプ大統領の癇に障り、「我々がどう感じるかをあなたに言われる筋合いはない」、「あなたはカードを持っていないのだから、このディールに縋るしかない」と顔を紅潮させて厳しい言葉を浴びせたのでした。
