2025年2月28日にホワイトハウスで計らずもテレビカメラの前で演じられたトランプ大統領とゼレンスキー大統領の応酬に世界は驚愕しました。ウクライナ戦争の停戦が遠のいて大きな落胆と幻滅を経験した米国の同盟国や隣国は、今度は「タリフマン(関税男)」を自称するトランプ大統領の関税政策に右往左往している状況です。3月4日に発動されたメキシコとカナダに対する25%の関税は、翌日にはUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)で非関税となっている自動車製品は1カ月の猶予措置が発表され、翌々日には同協定の対象品全てに猶予が拡大されるという目まぐるしい展開で、産業界や株式市場は混乱しています。果たしてこの関税騒動の着地点はどこなのでしょうか。(タイトル写真は、GMがメキシコで生産するシボレーブレイザーEV)

妥協の準備が出来ていなかったゼレンスキー氏

この経緯を見て、米国側は(あるいはヴァンス氏は)最初から今回の調印を潰すつもりだったという意見もSNS上などで見られましたが、あくまでも偶発的にあのような展開になったのだと思います。最後の10分の激しいやり取りだけを見ると、侵略された領土の奪還もおそらく放棄し、自国の資源を米国の軍事支援の代償として差し出す協定を迫られたウクライナが不憫で、トランプ政権の傲慢さに唖然とした人が多かったでしょう。

しかし、会見を最初から通して見ると、ゼレンスキー大統領がロシアの侵略を咎め、停戦後の「安全保障が必要」と執拗に主張するのをトランプ氏は辛抱強く聞いていたことが分かります。トランプ大統領は、米国やNATOの軍隊がウクライナに駐留することをプーチン大統領が絶対に飲まないことが分かっているので、資源の発掘で米国人や米国企業をウクライナに送り込めば、ロシアは攻めて来ないと踏んでいるのです。やはり、ゼレンスキー大統領は、自国の(正当な)主張に固執しすぎたことが否めないですし、トランプ氏はこの立場の違いをあえてメディアに見せるために、質問を受け続けたことも分かります。

画像: 腕組みをし、ヴァンス副大統領と激しく応酬するゼレンスキー大統領。トランプ支持派のFOXニュース(YouTube)では50分の会談を通して見ることができる。

腕組みをし、ヴァンス副大統領と激しく応酬するゼレンスキー大統領。トランプ支持派のFOXニュース(YouTube)では50分の会談を通して見ることができる。

直後に開催された欧州の緊急首脳会議で、マクロン仏大統領やスターマー英首相になだめすかされて、ゼレンスキー氏はやはり米国抜きの停戦はあり得ないと観念して、会談の失敗を「後悔している(regrettable)」と表明し、トランプ大統領にもう一度調印に向けた交渉再開の手紙を書いたことが、大統領の3月4日の一般教書演説で明らかにされました。

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