ビジネスはコロナ前に戻り、懸念はマージンの低下
2024年に1590万台(前年比+2.2%)の新車が販売された米国ですが、車両価格の高騰や金利高にも関わらず、(トランプ関税の不確定要素はあるものの)2025年も好調さは継続して1600万台前後になると予想されています。販売環境は、コロナ禍や半導体不足で供給が制限されて売り手市場だった2023年までとは変わって、インセンティブ(値引き)は乗用車で2383ドル*、トラックで3420ドル*と前年比で500〜700ドル上昇しており、平均ではメーカー希望小売価格(M.S.R.P.)の6.5%*に達しています。これに呼応して、実際の購入価格の平均は4万4636ドル*と低下傾向です。NADAによれば、販売店の新車1台あたりの平均粗利益は2247ドルに減少しており、コロナ前のビジネス状況に戻ったと見られています。(*:J.D.パワーのデータによる)
こうした中で、販売店が2025年の課題としているのは、「売り玉の確保(Availability)」と「買いやすさ(Affordability)」であり、特にハイブリッド車が人気で在庫水準が20〜30日と低いホンダやトヨタなどは、売り玉の確保が引き続き課題となっています。
インフレの沈静化にともない、FRB(米国準備制度理事会)が2025年2〜3回の金利の引き下げを行う見込みで、平均で756ドルまでに上昇した毎月のローン支払額を押し下げると期待されており(2019年は590ドル/月)、販売店は装備を充実させたエントリーモデルの設定などでメーカーと協力して対応を図ります。カリフォルニア州やテキサス州で計18店舗のホンダ店を展開するホンダ販売店協議会の会長は、「2025年はハイボリューム、低マージンのビジネスになるだろうが、過去数年間にタマ不足で他ブランドに流れてしまった顧客を取り戻すチャンス」と捉えています。魅力的なリースプランや既納客向けプログラム、現金インセンティブなどを組み合わせて販売台数アップを狙うようです。
日産ディーラーは、在庫の回転率アップと販売量の回復を目指す
さて、ホンダとの経営統合協議を撤回した日産ですが、2024年の米国販売台数は92万4008台*(前年比+2.8%)と10〜12月期の二桁増が貢献してプラスとなりましたが、販売コストの増加でメーカー本体の業績には大きなマイナス要因となっています。アメリカ日産のクリスチャン・ムニエ会長は、「まずは売れるクルマを供給して、2024年5月に112日分あった在庫を適正とされる50〜55日にすること」を目指しています。そのためには、製品のグレード体系を簡素化し、シートヒーターやサラウンドビューモニターなどの人気装備をパッケージ化して買いやすくするなど対策し、販売店の粗利と店舗あたりの販売台数の引き上げを狙います。(*:インフィニティの5万8070台を含む)
日産ディーラー協議会のマイク・レジ会長も、モデルチェンジしたばかりの小型SUVのキックス、中型SUVのムラーノ、フルサイズSUVのアルマーダなどの新型車に期待を寄せるとともに、販売の柱であるコンパクトSUVのローグ(Rogue)を月販1万4000台→2万5000台に回復させて、ディーラーの平均月間販売台数を現在の45〜48台から70台に引き上げたいと語ります。日産の全米の販売店舗数は1079店ですが、現在の販売台数やモデルミックスからすると多すぎるので、マーケットシェアを今の5.4%から6%に、ひいては7%まで回復させることが目標です。
![画像: 2025年モデルとして追加された日産ローグ「ロック・クリークエディション」は、オールロードタイヤやヒルディセントシステム、プロパイロット2.1やサラウンドビューカメラなどの装備を満載する。価格は3万7275ドルと手頃だが発売は2025年夏。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783662/rc/2025/02/09/394f3989c7d7bcebbdc7ec932e6063c6e9cbadb0.jpg)
2025年モデルとして追加された日産ローグ「ロック・クリークエディション」は、オールロードタイヤやヒルディセントシステム、プロパイロット2.1やサラウンドビューカメラなどの装備を満載する。価格は3万7275ドルと手頃だが発売は2025年夏。