2025年1月29日、トヨタ、スズキ、ダイハツの3社は、共同開発による商用軽EVの導入を2025年中に開始することを発表した。同EVは当初2023年度中に発売予定だったが、生産を担当するダイハツの不正認証問題の影響で延期されていたもの。今回の発表により、2025年度内には、商用軽EVがほぼ出揃うことになる。(タイトル写真はイベント展示用のダイハツ仕様車)

トヨタ、スズキ、ダイハツが共同開発した商用軽EVがようやく発売へ

今回、改めて発表された商用軽EVは、2022年7月に行われた上述3社とCJPT(※)による計画発表時点では、2023年度中の発売を目指していた。その後、2023年5月に開催されたG7広島サミットや同年に開催されたジャパンモビリティショー2023では、ほぼ量産仕様とも呼ぶべき車両が展示され、開発は順調に進んでいることが伺われた。

ところが2023年4月にダイハツで発覚した不正認証問題の影響で発売を延期することに。一方、やや遅れて2022年12月に商用軽EVの導入計画を発表したホンダは、2024年10月に「N-VAN e:」の発売を開始している。ちなみに軽商用EVは、三菱自のミニキャブEV(現行型は2023年11月発表)、そのOEMバージョンである日産のクリッパーEV(2024年1月発表)が、すでに自治体や運送事業者で普及している。

今回、ようやく発売時期の発表にこぎ着けた3社共同開発の軽商用EVであるが、正式車名はまだ公表されていない。とはいえ、トヨタ仕様は「ピクシス バン」、スズキ仕様は「エブリイ」、ダイハツ仕様が「ハイゼットカーゴ」の各社ラインナップに加わり、新たなシリーズ車名が与えられることはないと思われる。

※CJPT=Commercial Japan Partnership Technologies株式会社。2021年4月、輸送業が抱える課題の解決やカーボンニュートラル社会の実現への貢献を目指して、いすゞ自動車・日野自動車とトヨタ自動車によって設立。同年7月にはスズキ、ダイハツ工業も参画。不正認証問題を受けて2024年2月にダイハツは脱退したが、2025年1月29日に復帰。

ダイハツのハイゼットカーゴがベース。EVシステムに各社の知見を投入

この商用軽EVは、スズキ、ダイハツによる小さなクルマづくりのノウハウと、トヨタの電動化技術を融合して3社で共同開発した軽商用車に最適な適したBEVシステムを搭載している。企画にあたってはCJPTも参画しており、効率的なラストワンマイル輸送に最適な仕様とともに、物流各社への導入促進も期待されている。

ベースになったのはダイハツのハイゼット(DNGAプラットフォーム)であるのは外観からも明らかであり、さらにいえば各社から発売されるクルマも外観を始めその差異はわずかとなるはず。ゆえに、生産はダイハツが担当し、EVシステムの開発は各社の知見を持ち寄りつつトヨタが主導的な役割を果たしたと予想する。

画像: ジャパンモビリティショーでスズキが参考出品したコンセプトモデル。サイドミラーの造形などが量産車とわずかに異なる。

ジャパンモビリティショーでスズキが参考出品したコンセプトモデル。サイドミラーの造形などが量産車とわずかに異なる。

航続距離は200km程度と公表されており、三菱ミニキャブEV/日産クリッパーEVの180kmよりも長い。一方、ホンダのN-VAN e:の245kmには及ばない。もっとも、商用VANでありラストワンマイルの配送業務に用いられることを考えれば、一概に航続距離の長短だけで判断するのは早計ではある。充電時間、充電インフラ、さらに導入コスト(車両価格)など多方面での判断が求められる。

いまや軽商用車は、商用車全体の保有台数のおよそ60%を占めるほど普及しており、社会インフラとして不可欠の存在になっている。電動化が進めばカーボンニュートラル実現への貢献度は大きい。ともあれ、今回の発表で商用軽EVがひととおり出揃うことになる。

商用軽EVでは、三菱がミニキャブ・ミーブ時代を含めて長い歴史を誇るが、今後は日産、ホンダ、そして新たにダイハツ、スズキ、トヨタが加わることで、普及が急加速していくことは間違いない。

ガソリンエンジン車との外観上の違いがほとんどないゆえにEVが走っていても気づくことは少ないと思われるが、よくみたら近所を走る宅配便のバンが全部EVになっていた! なんて時代はもうすぐそこまで来ている。

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