日本はホンダと日産の経営統合の話題で沸騰中ですが、2024年9月から4カ月にわたって交渉を続けてきたフォルクスワーゲン(VW)と同社労使協議会及びドイツ金属労働組合(IGメタル)の労働協約交渉が、5日間70時間にわたるマラソン交渉の末、先週金曜日(2024年12月20日)に合意に至りました。経営側、労組側ともに譲る気配を見せず2回の警告ストライキもあり、「大規模ストライキ突入」も不可避かと思われましたが、ドイツ自動車産業の直面する厳しい環境下で組合側が予想以上に譲歩した形で決着しました。組合側は今回の闘争が2025年まで長引くことの悪影響を考慮、経営側も1日のストライキで1億ユーロ(160億円)の売り上げ損失とされる業績への影響を避けるべく、リストラのペースを少し緩めたと形で決着したと言えるでしょう。合意の内容の詳細を見てみます。(写真は50年間ウォルフスブルグのVW本社工場で生産されているゴルフ)

賃上げは2030年まで凍結

今回の組合側の主要な譲歩のひとつは、元々7%の賃上げを掲げ、2024年11月に他の金属・電気産業との交渉で5%の賃上げを勝ち取っていたドイツ金属労働組合(IGメタル)が、2030年まで賃上げを実質凍結することに合意したことです。5%の賃上げに当たる部分は、生産台数減などで手取りが減少する際の給与補償や早期退職プログラムの原資としてプールされることになります。これが2030年まで続き、2031年からは賃上げを復活するとしています。

また、年2回(5月、11月)のプロフィットシェアリング(利益分配)のうち1回を2027年から2年間凍結し、その後も減額するほか、「タリフプラス(Tarif plus)」と呼ばれる勤続年数の長い従業員に与えられる割増ボーナスや休業手当、勤続25年と35年時のアニバーサリー手当など、業界の水準を超えた手厚い給付は大幅に抑制されます。

経営陣の求めていた一律10%カットはできませんでしたが、組合としては大きな譲歩をしたと言えるでしょう。会社側は、これにより年間40億ユーロの固定費の削減(内、人件費は15億ユーロ)ができ、中期的には150億ユーロのコスト削減につながるとしています。

雇用保証は2030年まで担保

組合側が成果として一番に挙げているのは、2030年までは生産調整のための従業員の整理や一時解雇はなく、雇用そのものは保証される約束を取り付けたことです。これは、2023年9月に会社側が破棄していた条項でした。これから先、生産車種の移管などで操業ペースが落ち、通常なら解雇やレイオフするところを、雇用状態は維持しながらプールした資金で給与を補っていく形になります。

今回の合意を受けて、組合側は「IGメタルのレッドラインは死守された。工場閉鎖、大量解雇、労働協約の長期的削減はない。結果、この合意は良い妥協案となった」とその成果を称揚しています。商用車を生産するハノーファーの工場も縮小対象に上がっていたようですが、ここでもID.Buzzとマルチバン(T7)の生産の継続が約束されており、パサートの生産をシュコダの工場に移管したエムデン工場も、ID.7に加えて今後一部改良されるID.4の生産を継続して2シフト体制は維持されます。

また、カッセルやザルツギッターなどのコンポーネント工場も年間5億ユーロのコスト削減を図りつつ製品の計画が約束されました。また、もし雇用保証が2031年以降に継続されない場合、会社は10億ユーロを従業員側に支払うという条項も盛り込まれています。

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