2024年11月5日の米国大統領選挙の結果、ドナルド・トランプ氏が130年ぶりに2期目の防衛に一度失敗した後に大統領に返り咲くことになりました。選挙当日まで、鍵となるスウィングステートを含めて民主党候補のハリス副大統領との大接戦が予想されましたが、蓋を開ければ、ペンシルベニア州やミシガン州などかつて「青い壁(ブルーウオール)」と言われた民主党の牙城を含め7州全てで3ポイント前後の差をつけて勝利しました。隣国メキシコを含め外国からの輸入品に高関税をかける、EV購入支援策を廃止すると主張しているトランプ氏の第2次政権で米国はどのように変化するのでしょうか(タイトル写真は大統領選挙の勝利宣言に登壇したトランプ氏とメラニア夫人。Foxニュース配信動画より抜粋)

不動産王が労働者の味方という逆説

もう一つは、ハリス氏が立場上バイデン大統領から距離を取ることができず、変化をもたらすとは思えなかったことです。インフレや不法移民対策、ウクライナ戦争への対応などで「トランプは私たちのために戦ってくれる」という期待を醸成することに成功したのに対し、副大統領でありながら過去4年間に目立った実績も知られておらず、「ハリスは未知数だが、トランプはどんな人物か知っている」という消極的な選択を行った有権者もかなり多かったのです。

民主党左派を代表するかつての大統領候補であり、10年前に「ウォールストリートを占拠せよ」運動などの精神的指導者だったバーニー・サンダース上院議員は、「今の民主党政権は何千万人もが抱える政治的『疎外感』を理解できていない」とエリートテクノクラートの集団となった同党の在り方に疑問を呈しています。かつては労働者の味方は民主党でしたが、今はその役割はトランプ氏を中心とする共和党に取って代わられたのです。テレビドラマで「お前は首だ」と宣言する社長を演じて人気を博した富裕なビジネスマンがこの大転換の中枢にいるという逆説に、今のアメリカ社会の混迷が象徴されているようです。

正当な大統領は歴史に名を刻みたい?

ではトランプ氏はどんな政策を実施するでしょうか。まず、2020年の大統領選の結果を受け入れず議会への暴徒の乱入を煽ったなど4つの事案で起訴された逆風下にありながらも再度当選するという、アメリカ政治史で歴史的な勝利を遂げたことで、トランプ氏の承認欲求とエゴは大いに満たされたでしょう。正当的なリーダーとなった今、2期目のトランプ大統領は、怒りに任せたり突飛な行動で世間を驚かす振る舞いは減るかもしれません。自分を議会での2度の弾劾や起訴に追い込んだ政敵にはたっぷり報復するでしょうが、同氏の関心は歴史に名を残すような業績を米国史や世界史に刻むことに向けられるのではないでしょうか。

NYタイムズのサンガー氏が言うように、それはまずウクライナ戦争を停戦に導くことかもしれません。本人が豪語した就任24時間以内という事はないにしても、アメリカの武器支援がなくなれば、EUにウクライナの抗戦を支える力がどこまであるかは疑問です。ドイツの連立政権は崩壊し、かつてのメルケル独首相のようなリーダーはEUにはいません。来年2月には丸3年を迎える戦争を停戦に持ち込むことができれば、トランプ氏は歴史に名を残すことになるでしょう。また、選挙戦中に掲げた「20の約束」のトップに置いた国境問題においては、メキシコ経由の不法移民を減らすために移民申請手続きを厳格化し大量の強制送還も辞さないでしょう。トランプ氏当選のニュースだけでも、命をかけてジャングルを渡ってアメリカ国境を目指す移民の数は減る気配です。

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