拍手喝采するテスラファンと冷ややかな投資家
2024日10月10日(日本時間10月11日)、サンフランシスコ丘陵地帯にある広大なワーナーブラザーススタジオでテスラの「WE,ROBOT」が開催された。テスラ初の完全無人運転によるロボタクシー「サイバーキャブ」が初めて披露されるとあって、世界中から注目を集めていたイベントだった。その模様はライブストリーミングされ、世界中のテスラファンはもとより、ジャーナリストや投資家たちが目を皿のようにして視聴していたはずだ。
ところが、イベントで謳われたのは “将来”が中心であり、“いま”ではなかった。20台のサイバーキャブがワーナースタジオの敷地内を走り回り、サプライズとして「サイバーバン」も登場した。にも拘わらず、サイバーキャブのスペックやそれを使ったフリート事業の見通しにはほとんど触れられることなく、サプライズ登場となったサイバーバンは将来の量産化に向けて検討をしていることをほのめかしただけ。スピーチのほとんどが“予定や見込み”に終始した。つまり、具体性に欠けており、投資家が期待していた“事業”に関する具体的な見通しはほとんどスルーされた。
案の定、翌11日のニューヨーク市場でテスラの株価は前日の終値から9%近く(8.78%)も下落。サイバーキャブに関する情報公開の内容が乏しかったことから、その実現性に懐疑的な見方が広がった上、一部の投資家たちはいわゆる「モデル2(販価が2万5000ドル以下と言われる)」のサプライズ発表を期待していただけに失望売りにつながったようだ。
そもそも、このイベント開催の目的は、今まで言葉で説明してきたテスラの近未来の姿を、サイバーキャブの公開を惹きにして具体的に見せることにあった。多くのテスラファンがその将来ビジョンに改めて共鳴し、拍手喝采した。対して、投資家やアナリストの多くはあくまで冷静であり、“豪勢な夢物語”という不満の声も上がっていたほど。彼らが期待していたのは、もっと具体的な事業計画だった。話が長いことで知られるイーロン・マスクCEOのスピーチは15分足らずで終了し、あとは “近未来のパーティ”が繰り広げられた。投資家たちの期待感は見事に肩透かしを食らったことになる。