2024年9月10日、JR東日本は上越新幹線にドライバレス運転を導入すると発表した。2028年度に長岡駅~新潟新幹線車両センター間(60.8km)の営業列車と回送列車の自動運転(GOA2)、および2029年度に新潟駅~新潟新幹線車両センター間(5.1km)の回送列車のドライバレス運転(GOA4)導入を目指すという。

鉄道の自動運転レベルは運輸係員の乗務形態で決まる

自動車においては、自動運転技術の開発で各社が競争を繰り広げているが、鉄道分野においても同様に自動運転技術の導入が急ピッチで進められており、それぞれ自動運転の内容によってレベル分けがされている。

自動車分野の自動運転レベルは、完全手動運転のレベル0から完全自動運転のレベル5までの6段階で評価されるのに対し、鉄道では完全手動運転のレベル0から運転士含めた係員の乗務が不要なレベル4までの5段階に分類がなされる。(Grade of Automation:GoA、IEC 62267(JIS E 3802):自動運転都市内軌道旅客輸送システムによる定義 )

画像: 列車の自動運転にもレベル分けの基準が存在し、レベル3以上でドライバレス運転(運転士不要)を実現する

列車の自動運転にもレベル分けの基準が存在し、レベル3以上でドライバレス運転(運転士不要)を実現する

ちなみに、ドライバレス運転とは、自動運転のうち運転士の乗務を必要としないもので、レベル3以上がそれに該当する。

【列車運転の自動化レベル(Grade of Automation、GoA)】
レベル0「GoA0」:目視列車運転(例:路面電車)
完全手動運転で操作はすべて運転士が行い、運転操作結果を監視・制御するシステムを搭載していない運転形態。
レベル1「GoA1」:非自動列車運転(例:踏切等のある一般的な路線)
運転士がすべての操作を行い、信号システムは運転士の運転操作結果(速度)の監視を行う運転形態。
レベル2「GoA2」:半自動運転(例:丸の内線・南北線、首都圏新都市鉄道(TX)など)
運輸係員が先頭車両の運転台に乗務して軌道を目視し、危険状態の場合に列車を緊急停止させる運転形態。加減速は自動化され、速度は自動運転システムにより常に監視・制御される。
レベル2.5「GoA2.5」:緊急停止操作等を行う係員付き自動運転(例:なし)
列車の前頭に乗務する係員が緊急停止操作、避難誘導要員として乗務する運転形態。
IEC、JISに規定のない国土交通省独自の定義である。
レベル3「GoA3」:添乗員つき自動列車運転(例:舞浜リゾートラインなど)
運輸係員が列車に添乗するものの、加減速・緊急停止も行わない完全自動運転を実施する運転形態。
係員は運転台にいる必要がないので、運転士である必要がなくなる段階。
ドアの開閉や安全確保を係員が行う場合とそれも含めてシステムが責任を負う場合の2種類がある。
レベル4「GoA4」:自動列車運転(例:ゆりかもめ、神戸新交通など)
運輸係員が乗務せず、すべての機能について無人化されている運転形態で、いわゆる完全“無人運転”を実現している段階。

ドライバレス運転を上越新幹線に導入して世界をリード

JR東日本が発表した新幹線の自動運転導入計画によると、2028年度に長岡駅~新潟新幹線車両センター間(60.8km)の営業列車と回送列車の自動運転(GOA2)、2029年度に新潟駅~新潟新幹線車両センター間(5.1km)の回送列車のドライバレス運転(GOA4)が導入される予定で、すでに地上設備・車両改造等の工事に着手しているという。

さらに、2030年代中頃には、東京駅~長岡駅間に自動運転(GOA2)を導入した後、東京駅~新潟駅間の営業列車のドライバレス運転(GOA3)、および回送列車のドライバレス運転(GOA4)導入を目指す。北陸新幹線および東北新幹線においても、自動運転の導入を目指して進行中だ。

画像: 将来的には東北新幹線・北陸新幹線にも導入を目指している

将来的には東北新幹線・北陸新幹線にも導入を目指している

ドライバレス運転導入に向けた研究開発も進行中で、乗務員が担っている業務のシステム化のため、自動でダイヤ通りに列車を運行する装置や、異常を自動で検知する装置などの開発に取り組んでいる。

最適な運転パターンを実現する装置の開発

ドライバレス運転に必要となる加速・減速・定位置停車のほか、臨時速度制限や臨時停車等にも対応し、自動でダイヤ通りの走行や効率的な省エネルギー運転を実現する最適な運転パターンで運行する装置は、2019年度よりE956形式新幹線電車(ALFA-X)にて走行試験を実施し、2028年度の自動運転(GOA2)導入時の使用開始を目指して開発が進められている。

画像: 自動で効率の良い運転パターンを実現する装置を開発中

自動で効率の良い運転パターンを実現する装置を開発中

列車の異常振動を検知する機能の開発

新幹線の安全性向上のため、台車の異常を検知する既存のモニタリング装置を活用し、走行中の異常な振動を検知した場合、乗務員に代わり自動で緊急停止させる機能は、2029年度のドライバレス運転(GOA4)導入と同時導入を目指して開発している。

画像: 移動振動を検知し、自動停止させる装置で安全性の向上を図る

移動振動を検知し、自動停止させる装置で安全性の向上を図る

JR東日本によると、自動運転を導入することで、安全性・輸送安定性の向上や効率的な運転による省エネルギー効果などが期待でき、ドライバレス運転の導入により、需要に応じた柔軟な列車運行ができるほか乗務員が様々な業務に従事できるようになり、人口減少や働き方改革など社会環境の変化に対応したサステナブルな鉄道経営を実現できるという。

新幹線への自動運転導入が鉄道の運行、さらに鉄道の経営全体にどのような影響を与えるのか、今後の動向に注目していきたい。

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