2024年5月30日、フォルクスワーゲングループはエントリークラスのEVプロジェクトを発足させるとともに、2027年に発表する計画を公開した。このコンパクトEVは欧州で生産されて、欧州市場に向けて販売されるという。

up!と同等サイズのエントリーコンパクトEVか

日本市場でフォルクスワーゲンが展開するEVブランド「ID.」シリーズは、全高が1640mmと少し背の高いクロスオーバーSUVのようなフォルムを持つID.4のみだが、欧州や中国市場ではコンパクトからセダン、商用バンまで多くのモデルが展開されてフルラインナップのような様相を呈している。

ガソリン車のゴルフと同等の車格を持つID.3、ID.4をベースにクーペルックとしたID.5と3列シートにしたID.6、全長5m近いセダン&ワゴンのID.7、そしてフォルクスワーゲンタイプIIを現代版EVとして蘇らせたID.Buzz、さらにいくつかのモデルにスポーツタイプのGTXを用意するなどとにかく幅広い。

さらにはID.3よりもコンパクトで、ガソリン車でいうところのポロと同じセグメントにあたるID.2(全長4050×全幅1812×全高1530mm/現時点ではID.2 allという名称)のコンセプトモデルはすでに2023年3月に公開され、2025年末の発表が予定されている。

ナンバリングにすると2から7までが揃おうとしているのだ。そんな状況で「1」の登場を期待するなという方が難しいだろう。

そして2024年5月28日、フォルクスワーゲンは欧州市場向けの新たなコンパクトモデルでエントリークラスEVのプロジェクトを発足させ、2027年の発表を予定しているという。車名こそ明かされなかったが「ID.1」であろうことは公開されたティザー画像をID.2と比較してみても明らかだ。

画像: up!と同等サイズのエントリーコンパクトEVか

Aピラーの根本からルーフ後端までのラインはID.2とほぼ同じでありながら、前後オーバーハングはギリギリまで切り詰められてボンネットフードも短い。ボディサイズを含む細かい情報は公開されなかったが、up!(全長3540mm)と同等か少し大きいくらいではないかと予想できる。フォルクスワーゲンのAセグメントカーが2027年に復活、ということかもしれない。

そして最大のトピックは、ID.2の2万5000ユーロ(約420万円)より手頃な2万ユーロ前後(約340万円)という車両価格の設定だろう。何十年も続いてきたガソリン車時代におけるフォルクスワーゲンの「最初のマイカー」、そして「手頃なモビリティ」という国民車のブランドイメージは、EVの時代でも変わらない。その上で、同ブランドCEOのトーマス シェーファー氏は「eモビリティを普及させるためには、特にエントリーレベルのセグメントにおいて魅力的な車両を導入する必要があります。私たちのブランドは、すべての人々のためのeモビリティを実現することを約束しています」とコメントしている。

ただこのモデル、日本に導入される可能性は低そうだ。「欧州向けのモデル」と説明されていることもあるが、クルマを構成するパーツやコンポーネントの輸送経路を短縮して生産段階におけるCO2排出量を削減することを目的に、部品調達の大部分を欧州で完結させるというのだ。これは完成車の輸送においても同様だろう。そしてもうひとつ、産業拠点を集中させることは、欧州に経済的なメリットをもたらすことになる。

このID.1(仮称)とID.2の登場に期待がかかるが、実は2025年末のID.2発表と同時にもうひとつ、コンパクトなSUVも発表されるという。少し先になるがこちらも気になる存在だ。

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