最大容量1714Lのラゲッジスペースを実現
ID.ラインナップのフラッグシップ・サルーン「ID.7」の正式発表から3カ月。予想通り、そのエステートバージョンが発表された。とは言え、フロントエンドから後ろはツアラー専用の設計。ルーフラインを始め独自のデザインが採用されている。フォルクスワーゲンブランドからラインナップされるパサートヴァリアントは伝統的なボディラインだが、ID.7ツアラーは抑揚が効いたデザインを採用しておりアクティブで近未来的なイメージが強い。
長いルーフラインと後席ヘッドルーム高を増したことで、ラゲッジ容量は5人乗り時には605L、後席を倒した2人乗車であれば2mの長尺物も収容できる1714Lの大容量が実現する。これは最大のライバルとなりそうなBMW i5ツーリングよりもわずかに広い。
さらに、後席のリクライニング角度を変えることで収納スペースを調整できる機能も採用されている。長期のバカンス旅行がライフスタイルに組み込まれている欧州でも、十二分とも言える容量だろう。手を使わず足先のジェスチャーでバックドアの開閉できるシステムも設定されるという。
バッテリーは2種類、77kWhと新設定の86kWhパック
搭載されるバッテリーサイズは、77kWh(セダンと同じ)と86kWhの2種類から選べる。前者の航続距離は616km、後者は685km(いずれもWLTPモード)だ。新設定の86kWhパックは200kW急速充電器にも対応しており、およそ30分でSOC10%〜80%の充電が可能だ。
なお、どちらも後輪駆動のシングルモーターで最高出力は286psと変わらない。なお、86kWhバッテリーは近い将来にセダンにも搭載車が設定される見込みだ。
ARヘッドアップ/15インチディスプレイを全車標準
室内で目を惹くのが、全車に標準装備されるAR(拡張現実)ヘッドアップディスプレイ。走行に必要なさまざまな情報はフロントガラスの視界内に投影されるので、ドライバーは前方の道路から視線を外すことなく運転に集中することができる。15インチのディスプレイモニターも標準装備となり、メーターやスイッチ類が整理されて、コクピットのデザインはすっきりとしたものになった。
フラッグシップにふさわしく、車内環境の快適性向上にも力が注がれている。ChatGPTを活用した新音声アシスタント「IDA」によって、ラジオ、電話、音楽、3ゾーンエアコンシステム、ナビゲーションを音声操作できるようになった。
デジタルマイクは、運転席、助手席のどちらが発声したのか認識するので、たとえば助手席側だけ温度を下げることができるほか、「手が冷たい」と言えばステアリングヒーターを作動させ手には暖かい空気をあてることもできる。
長距離ドライブに嬉しいマッサージ機能も搭載
さらに上位グレードのフロントシートには新しい圧力ポイントマッサージ機能と空調を組み合わせ「エルゴアクティブシート」も採用される。ツボ押しマッサージによって骨盤や背筋周辺の血液循環を促進し、さらに車内の温度を最適化することで、とくに長距離の移動での緊張感と疲労を低減する。マッサージ機能は、シートバックとクッションに組み込まれたプログラム制御のエアポケットの圧力上昇と減少によってコントロールされる。
フォルクスワーゲンのエステートは、内燃機関搭載車(高効率ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、プラグインハイブリッド)であるパサートヴァリアントから、フル電動のID.7ツアラーまでバリエーションが揃った。
もっとも、今回の発表は欧州仕様に限定されており、日本も含めどのような販売戦略が採用されるのかはまだわからない。昨今はエステートの需要が右肩下がりで、いまやSUVにその座は取って代わられた感もあるが、欧州での人気は根強い。先日発表された新型BMWのi5ツーリング、そして後に控えるアウディA6アバントなど、電動化時代であってもまだまだ欧州はエステート大国なのだ。