ディーゼル鉄道車両に代わる次世代車両として「水素動力車両」の開発を発表(2023年11月)しているJR東海は、新たにENEOS、日立製作所と連携して水素サプライチェーンの構築に乗り出す。去る24年5月16日、この3社による基本合意書が締結された。JR東海の非電化路線へ安定した水素供給を目指すとともに、鉄道車両内で水素を製造する世界初の技術にも挑戦していくという。(タイトル写真はJR東海の非電化路線である高山線)
JR東海の研究所では模擬車両のシミュレーションも開始
水素を輸送し貯蔵する際に用いる水素キャリアの候補は、液化水素やメチルシクロヘキサン(MCH)が有望とされている。液化水素は、水素をマイナス253度に冷却して液化したもの。高純度の水素を輸送・貯蔵することができる。
一方、MCHはトルエンと水素を反応させて製造・輸送・貯蔵を行う。MCHは常温では液体でガソリンに近い特性をもち、既存の輸送・給油設備を大きな改修をせずに活用できるとされている。利用するには水素とトルエンを分離する技術・設備が必要だが、水素を取り出したあとのトルエンは再利用が可能だ。車両内でこの工程を実現できれば、従来の給油機をMCH充填設備に置き換えるだけで事足りる。
JR東海の小牧研究施設では、燃料電池または水素エンジンを動力源とした車両の模擬走行試験も始まっている様子。とくに山間部の運行が多く長距離となる非電化路線への適合可能性等が慎重に検討されているようだ。早期のサプライチェーンの構築が実現すれば、それらの課題も解消されるだろう。水素エンジンを搭載した車両の実現にも期待したい。