2024年5月15日、スズキは米カリフォルニア州のスタートアップ企業「Glydways(グライドウェイ)」に出資することを発表した。グライドウェイは「PRT(Personal Rapid Transit:個人用高速輸送システム)」の開発会社として米国カリフォルニア州に設立され、軽自動車サイズの小型電動車両をオンデマンドで自動運行するシステムを開発している。両社は車両開発/生産等における協業の検討を開始していることも明らかにした。(タイトル写真はGlydways社が手がける米ノーマン・ミネタ国際空港のPRTシステム完成イメージ)

オンデマンドで効率良く運行する個人用高速輸送システム

「PRT」は乗車定員2名(または4名)の小型電動車両。車両間で通信しながら専用の走行レーンを高密度で自動運転を行う。輸送量あたりの都市空間専有面積が小さく、季節や時間帯などにより変動する移動需要に柔軟に対応できる新たな交通システムだ。

インフラ整備や運用コスト、車両台数を抑えながら、必要な時に必要な台数だけを配車することで効率的で利便性の高い次世代都市交通システムのトップランナーとも言われている。

画像: Glydways(グライドウェイ)のPRT車両。軽自動車サイズのコンパクトな自動運転の電動車だ。

Glydways(グライドウェイ)のPRT車両。軽自動車サイズのコンパクトな自動運転の電動車だ。

画像: 車両は専用レーンを自動走行。オンデマンドで効率良く運行できる。

車両は専用レーンを自動走行。オンデマンドで効率良く運行できる。

そのパイオニア的存在が、米国カリフォルニア州サンフランシスコに本拠を置く「Glydways(グライドウェイ)」。設立は2016年だが、2024年2月には同州のノーマン・ミネタ国際空港とサンノゼのダウンタウン近くのディリドン駅を結ぶプロジェクトを受注。30〜40分かかっていたが、PRTの稼働により10分以内へ短縮される。

画像: ディリドン駅での乗車/降車場のイメージ。

ディリドン駅での乗車/降車場のイメージ。

スズキの鈴木俊宏社長は今回の出資について「小さな車両と簡易なインフラによって世界中の交通問題の解決を図るGlydwaysのミッションに共感しました。スズキの『小・少・軽・短・美』の理念にも通じる同社のソリューションの実現を、スズキが培った小さなクルマ作りの技術により加速させたいと考えています」とコメントしている。

日本導入も検討中。数年内に実験線運航が始まる可能性も

実は日本でもPRTの導入は前向きに検討されている。論より証拠、その導入に向けグライドウェイ社のPRT導入を検討している京都府が、興味深い調査結果を発表しているので一部を抜粋して紹介しておく。

【既存交通システムとの比較:京都市HP.より抜粋】
●最大で片道1万人/時間の移動が可能。LRT(Light Rail Transit:路面に敷いたレールの上を走る電動車両)は同1900人/時間、BRT(Bus Rapid Transit:専用レーンで走る連節バスなど)は同3600人であり、大きな輸送能力が期待できる。
●整備費は1kmあたり60億円以下であり、地下鉄の1kmあたり150〜350億円に比べ相当安価になることが期待できる。
●課題として、鉄道事業法、軌道法、道路運送車両法など法令とのすり合わせが必要。専用走行レーンの設置が道路となるため、軌道法との調整・適用が現実的。
●次世代PRTは世界的に先例がない交通システムであるため、まず実験線を整備して安全性などに係る検証を十分に重ねた後に、外部有識者等による技術基準を審査する委員会を設置していく必要がある。国の許認可等を得て着工に至るまで、委員会の設置から5年程度は必要と想定。実験線の整備から工事完成まで8年程度を要するものと考える。

画像: スズキが公開したPRT車両のイメージ。

スズキが公開したPRT車両のイメージ。

画像: スズキが公開したPRTのインテリアイメージ。

スズキが公開したPRTのインテリアイメージ。

PRTのメリットと課題はここに集約されていると言っていいだろう。公共交通がさまざまな課題に直面している現在、PRT導入はその早期の導入に期待が寄せられている。とくに都市部や観光地などでは、定期運航のバスや鉄道を補完する新たな交通システムとしての活躍が期待できそうだ。タクシーのような個別の行先指定はできないものの、必要な時に必要な台数が自動で走るPRT。スズキの参画によって国内での実現が加速するかも知れない。

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