空飛ぶクルマの商用運航もいよいよ来年から始まりそうだ。一方、その離発着をどこで行うかはその先にある課題でもある。三菱地所グループの株式会社三菱地所設計が発表した近未来都市の設計に関する提案は、そんな課題を解決する「進化したモビリティがインストールされた未来のまちのあり方」だ。空からのアプローチを手に入れた“次のまち”には、どんなライフスタイルが待っているのだろうか。

空と地上の移動をシームレスにつなぐビルの実現に向けて

三菱地所設計が提案するのは、eVTOLを介して人やモノがビルの屋上や中間階に直にアクセスできる社会を実現すること。同社は昨年8月に「Passenger VTOL」と名付けられた4人乗りの全自動操縦型電動式モジュラー型eVTOLのアイデアを公開しているが、今回の提案はこの新しい乗物を実際に都市でどのように活用するかが描かれている。

画像: eVTOL「Passenger VTOL」は、プロペラ・キャビン・走行の3つのユニットから構成される4人乗りの全自動操縦型eVTOL。

eVTOL「Passenger VTOL」は、プロペラ・キャビン・走行の3つのユニットから構成される4人乗りの全自動操縦型eVTOL。

画像: 空と地上の移動をシームレスにつなぐビルの実現に向けて

eVTOLの社会実装が進むと、その離発着所として注目されるのが都市部に林立する高層ビルの屋上だ。三菱地所設計は、ビルの屋上や中間階を従来の地上のエントランスに加え「新たな玄関」とすることを提案している。

「Passenger VTOL」の離発着のためのバーティポート(垂直離着陸用飛行場)となり、旅客乗降、荷物の積み下ろし、「Passenger VTOL」の飛行走行モードの転換などが行われる。ビル外壁面には、人を乗せたままで「Passenger VTOL」を地上との間でエレベーターのように昇降させる機構も設けて乗換えの手間を極力省く。都市部における物流・人流の拠点としての新たな役割をビルに与えようという提案だ。

バーティポートが設けられたビルのイメージ

三菱地所設計では、かねてより新時代のモビリティ構想「SMS:Seamless Mobility System」を提唱しており、新しい移動のあり方を設計事務所の立場から提案してきた。今回は、より自由な空間利用を可能にするeVTOLのあり方を提案している。

画像: バーティポートが設けられたビルのイメージ

①上空を飛行する「Passenger VTOL」。
②シームレスな離発着を可能とする、プロペラユニットを装着するパーゴラ屋根。
③プロペラユニットを切り離し、屋上を移動する走行モードの「Passenger VTOL」。
④ビルの新たなエントランスとなった屋上階には、ロビーをはじめとする利用者待合スペースとしての機能も与える。
⑤屋上と地上との間で、エレベーターのゴンドラのように「Passenger VTOL」を昇降させる搬送システム。各階への着床も可能な外壁部に設けられる新たなビルの建築要素。
⑥地上に降りた「Passenger VTOL」は、自動車としてそのまま都市内を移動していく。

画像: 新築の高層ビルでなくても改築の際などにアイデアの一部を採用することが可能かも知れない。

新築の高層ビルでなくても改築の際などにアイデアの一部を採用することが可能かも知れない。

人とモノの流れを生み出すバーティポートの機能と役割

ビルの屋上や中層階に設けられるバーティポートは、単なるeVTOLの離発着場所にとどまらずさまざまな機能・役割を与えることを意図している。

画像: 人とモノの流れを生み出すバーティポートの機能と役割

①パーゴラ屋根。フレーム内のガラス面では高効率の太陽光発電を行うことも想定。懸架された「Passenger VTOL」プロペラユニットはここで充電される。
②エレベーターでせり上げられたキャビンユニットは、プロペラユニットと合体され、飛行モードに切り替わる。
③充電中の走行ユニット。バーティポートに到着した飛行モードの「Passenger VTOL」は、走行ユニット上に着陸してドッキング、道路を自走できるようになる。
④「Passenger VTOL」は、さまざまなモビリティを組み合わせることで都市の新たな物流拠点を担うことも視野に入れている。

奇想天外と思われるかもしれないが、高層建築ラッシュや都市の再開発に沸く日本だからこその発想とも言える。ビルは単なる建物ではなく、モビリティと融合した「未来のまちの仕組み」に変貌する。ビルのこれからを予見した今回の提案発表は、絵空事ではなく来るべき未来を予言していると言えそうだ。

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