米中市場で競争激化
テスラはQ1の販売減の原因として、紅海でのフーシ派による輸送船攻撃の影響や、3月のベルリン郊外工場の放火事件による操業中断、加州フリーモント工場での新型モデル3の生産立ち上がりの遅れを上げています。しかし、生産台数は43万3000台で販売台数と5万台近いギャップがあり、テスラ車の需要が世界的に減速していると考えられます。
最大市場の中国では、新エネルギー車(NEV)の販売競争がさらに激化。トップのBYDは売れ筋のプラグインハイブリッド(PHEV)「秦DM-i」の車両価格を79,800元(約160万円)に2割下げるなど価格競争を仕掛け、ライバルの追い落としにかかっています。中国のIT大手の華為技術(ファーウェイ)と中堅自動車メーカー「セレス」の合弁会社の大型SUVである「AITO M7」が大ヒットするなど、充電や航続距離の心配の少ないPHEVが人気を集めているようです。また、中国のアップルと言われるスマホメーカーの小米(シャオミ)が3月末に初のEVを発売。テスラ モデル3を上回る動力性能や航続距離を持ちながら、1割以上(3万元)も安い21万5900元からの価格で衝撃を与えました。
テスラのお膝元の米国では、EV市場の成長が減速する一方でハイブリッド車が好調で、トヨタやホンダはQ1の販売を20%伸ばしています。またヒョンデやKIAは、新型EVのEV9やアイオニック6などの導入効果で、EV販売が前年同期比で倍近く増えました。競争の激化により2022年に65%あったテスラのシェアは昨年55%に減少しています。EV購入者がテスラを選ぶ最大の理由の一つの急速充電インフラも、同社のスーパーチャージャーを他社に開放するため、今後はテスラを選ぶ有力な理由とはなりにくく、本国でも苦戦を強いられそうです。