2024年3月21日、ヘリコプター運航事業を主に扱う株式会社AirXは、つくば航空株式会社と連携し、茨城県つくば市に空飛ぶクルマの技術実証・開発整備拠点「つくば空飛ぶクルマ テストフィールド」を開設した。空飛ぶクルマの拠点としては関東初で、今後はテスト飛行やパイロット育成などの中核拠点として利用されることになる。

「つくばヘリポート」が「空飛ぶクルマ」の拠点に

「つくば空飛ぶクルマ テストフィールド」は、ヘリポートの運営やヘリコプター運航事業を行う「つくば航空」が保有する「つくばヘリポート」内に開設された関東地方で初となる「空飛ぶクルマ」の拠点である。

画像: オープンセレモニーのテープカットの様子

オープンセレモニーのテープカットの様子

実証で使用される機材はEHang(イーハン)が開発を進める無人自動運転型eVTOL機「EH216-S」。同機は2023年に空飛ぶクルマ(eVTOL機)としては世界初となる型式認証を中国で取得しており、オートパイロットで小型軽量なのが最大の特徴となる。

つくば航空専務取締役の田中氏によれば、今後は同テストフィールドで技術実証を進めるとともに、空飛ぶクルマの組み立て、整備や操縦パイロットのライセンススクールの開設なども含めた「空飛ぶクルマ」中核拠点として発展させていきたいとのことだ。近い将来、つくば市は空飛ぶクルマをはじめとしたエアモビリティの先進地域として注目されていくことになるだろう。

空飛ぶクルマのデモ飛行も実施

2024年3月21日に行われたオープンセレモニーでは、空飛ぶクルマのお披露目およびデモ飛行も行われた。離陸して約30mまで上昇した後、つくばヘリポートの敷地内を三角形を描くようにおよそ350mほど飛行し、離陸した場所と同じポートに着陸するという一連の流れを無人状態と人間搭乗をイメージしたマネキンを乗せた状態でそれぞれ1回ずつ実施した。

画像: 筑波山をバックに飛行する「EH216-S」

筑波山をバックに飛行する「EH216-S」

当日の朝に地震があったこともあり、途中で報道ヘリや防災ヘリの着陸による中断を挟んだため、エンジン式のヘリコプターと電動の空飛ぶクルマの騒音の違いがはっきりと感じられた。

ヘリコプターの場合は、ローターによる風切り音に加えてエンジン音も非常に大きいため、爆音というレベルの騒音(約100dB・電車通過時のガード下レベル)を発生するが、空飛ぶクルマは電動でエンジン音が一切ないので、ほぼローターが風を切る音プラスアルファの比較的小さい音(約80dB・電車の車内レベル)で済む。

もちろん80dBもヘリコプターと比べたら静音というだけで、絶対値としては決して静かとは言えないレベルであることは間違いない。しかし、都市上空をエアタクシーとして移動することを考えると「空飛ぶクルマ」は今まで周辺住民への騒音問題で垂直離着陸機の移動ができなかった場所でも運航が可能になる、という点で画期的なことだと言えるだろう。

画像: 機内前方にあるモニターに情報がまとめて表示される。

機内前方にあるモニターに情報がまとめて表示される。

ちなみに、「EH216-S」は自動操縦システムを搭載している関係で計器類が存在せず、情報は全て中央にあるモニターに表示されるため、機内空間が広く、前下方視界も良好である。

この特徴をうまく活かすことで、ただ移動するだけでなく、途中の移動空間や移動体験という付加価値を生み出すことができれば、ヘリコプターにはない空の移動のエンタメ化という新たなあり方も創造できるかもしれない。

つくばヘリポートとつくば航空

つくばヘリポートはかつては茨城県が管理・運営を行なっていた公共ヘリポート(空港のように不特定多数のヘリが離発着できるよう建設されたヘリポート)だったが、2022年以降は同地にてヘリコプター事業を行なっているつくば航空に譲渡され、非公共用ヘリポートとなっている。防災等の行政用途のほか、民間運航者の人員輸送、航空写真撮影、報道用ヘリコプターなど様々なヘリ事業の離発着拠点として利用されているそうだ。

画像: つくばヘリポートには3個の格納庫があり、今回の「EH216-S」は一番奥の格納庫に格納されていた

つくばヘリポートには3個の格納庫があり、今回の「EH216-S」は一番奥の格納庫に格納されていた

一方、つくば航空は1990年に設立されたヘリコプター専門の航空会社で、操縦訓練はじめ航空測量、防災ヘリコプターの運航受託等、様々なヘリコプター事業を展開している。

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