2024年2月13日、ロボット・宇宙開発ベンチャー企業である株式会社ダイモンは、月面探査車「YAOKI」をベースにした「天井裏点検ロボット」の開発をスタートさせたと発表した。2024年内には開発を完了する計画だという。

軽量コンパクトであることが最大の武器となる月面探査車

いま世界のいくつかの国は月面開発競争の最中にある。なかでも1969年にアポロ計画で有人月面着陸を成功させたアメリカは、7度目の着陸を目指してアルテミス計画を進行中だ。計画は何度か前後しているもののNASA、米国航空宇宙局は現段階(2024年1月16日)で2026年9月に有人月面着陸させるスケジュールであることを発表している。

この計画はアメリカ主導で行われているが、イタリアや英国など30以上の国と地域が国際協力を締結、日本も参画している。宇宙航空研究開発機構(JAXA)はもちろん民間企業もいくつか参加しており、自動車業界ではトヨタやブリヂストンが月面探査車「有人与圧ローバ(愛称:ルナクルーザー)」を開発していることは知られている。

画像: トヨタの月面探査車「有人与圧ローバ(愛称:ルナクルーザー」の最新デザイン。

トヨタの月面探査車「有人与圧ローバ(愛称:ルナクルーザー」の最新デザイン。

そして、このアルテミス計画で月面探査を目指す日本のロボット・宇宙開発ベンチャー企業がある。月面探査車「YAOKI」を月面に送り込むプロジェクトを2021年秋にスタートさせたダイモンだ。YAOKIは月面探査“車”であるが、一般的なクルマとは比べものにならないくらい小さく、そして軽量だ。というのも、月面に物資1kgを輸送するのにかかる費用は1億円とも言われ、コンパクトであることが求められるという。

そうした中で開発されたYAOKIは、センサーやバッテリーなどを内蔵した本体に半球状のタイヤをふたつ装着したような形状。サイズは15cm×15cm×10cmと手に乗るほど小さく、重量を約0.5kgと軽くすることで輸送費を削減している。またコンパクトさゆえの走破性能を活かして、地球からのリモート操作で月面を走行、地表の接写画像データを獲得するのが狙いだ。

今後、YAOKIによって撮影された映像を目にすることがあるかと思うと、単眼カメラのつぶらな瞳に期待は高まるばかりだ。

画像: 月面探索車「YAOKI」。名前は転んでも立ち上がる機能と何度でも挑戦する意志の「七転び八起き」に由来。

月面探索車「YAOKI」。名前は転んでも立ち上がる機能と何度でも挑戦する意志の「七転び八起き」に由来。

いま天井裏の点検事業に大きな需要がある

さてYAOKIを開発したダイモンは、月面探査を主力事業としつつ地上ロボット事業も手掛けている。このふたつの事業の関連性は薄いように感じてしまうが、今回発表されたのは、YAOKIの技術と特徴であるシンプル、小型軽量、高い走破性を活かした「天井裏点検ロボット」の展開だ。

実はいま、天井裏の点検事業に大きな需要があるのだという。東京をはじめとした都市部にある建造物の多くは、1950年代以降の高度経済成長期に建てられたため老朽化が進んでいる。その数は2030年に「都市寿命」を迎えるのではないかと言われるほど多く、もし老朽化したビルを修理・補修することになっても、まずは点検する必要があるのだ。

しかし、点検を人だけで行うには時間がかかる上に、天井裏は狭く、しかも体重に耐えられないこともある。そこで、小型軽量な月面探査車YAOKIに採用された技術を天井裏点検ロボットに転用。障害物乗り越えるため、2輪だったタイヤを4輪に構造変更。グリップ力を高めるため、耐熱樹脂製タイヤを弾性材に変更。カメラレンズを広角にして立体把握センサーを追加するなど、天井裏点検への適正を高める改良を施す予定なのだ。

2024年内には開発を終えて、ビルの管理会社やメンテナンス会社などに向けて販売していくという。将来的には公共施設やマンション、インフラ設備の企業などへの拡販、そのさらに先には被災地救済ロボットや廃炉点検ロボットなど事業拡大を図る計画だという。

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