ラスベガスのCESが閉幕した週末から北極の最大級の寒波が北米大陸を襲い、シカゴやデンバーなど各地で、テスラの充電ステーションで長蛇の列ができ、何台もがバッテリー切れで牽引されたというニュースがアメリカのメディアやSNSを駆け巡りました。気温が摂氏マイナス20度まで下がったシカゴでは、数時間の充電待ちの列で車内で暖をとるうちに電欠したオーナーが続出し、プラグインしても充電器から電気が全く入らなかったり、通常の何倍もの時間がかかったのがこの混乱の原因でした。ロイター通信の自動車論説主幹のジョセフ・ホワイト氏は、ニュースレターで“Winter comes to EV”と、販売が減速しているEVに冬の時代到来だとコメントしました。

フォード、GMがEVピックアップ生産計画を修正

実際、年初からEVにとっては明るくないニュースが続いています。フォードはF-150ライトニングのミシガン州ルージュ工場での生産を4月から1シフトに減らし、1400人の従業員を配置転換すると発表。その半数は、近隣にあるブロンコSUVやレンジャーピックアップトラックなどの内燃車の生産工場に移動します。昨夏に3シフトで年15万台生産体制を確立した計画からの大幅な後退です。

GMも、ブランド別販売台数でトヨタ、フォードに次ぐ第3位のシボレーから、昨年後半にフルサイズピックアップトラックのシルバラードEVとSUVのブレイザーEVを発売しましたが、シルバラードEVの2つ目の生産工場の稼働を1年以上遅らせました。最大セグメントで最も収益力の高い大型ピックアップトラックでEV攻勢をかけようとしたGMとフォードの需要の読み違いが明らかになった形です。

画像: 寒波の襲来したシカゴの充電ステーションで立ち往生したテスラ車が次々に牽引されていった(米Fox TVニュースより)。

寒波の襲来したシカゴの充電ステーションで立ち往生したテスラ車が次々に牽引されていった(米Fox TVニュースより)。

欧州でEV販売が44カ月ぶりに減少

欧州自動車工業会(ACEA)の発表によれば、昨年12月の欧州の乗用車販売台数は前年同月比−3.3%となり16カ月ぶりに減少しました。特にEVの販売は2020年4月以来、44カ月ぶりに減少に転じました。原因は、最大のマーケットであるドイツの販売が前年同月比−23%となったことです。

ドイツの昨年のGDPは年率−0.3%のマイナス成長となり、経済は「欧州の壊れた成長エンジン」とメディアで評されるような状態です。同国の2023年(1〜12月)の乗用車販売台数は284万台(前年比+7.2%)ですが、昨年11月からは2カ月連続で前年同月を下回っています。EVの総販売台数は52万4000台(同+11.4%)で、シェアは17.7%から18.4%へと若干上昇(※1)しましたが、12月中ばの政府のEV補助金の終了で、今年5万台から10万台の需要減に働くとの予測もあります。※1:ドイツ自動車輸送連邦局(KBA)発表による。

すでに年初から、テスラがモデルYを最大9%値下げしており、これに各社が呼応せざるをえない状況です。メディア報道によれば、フォルクスワーゲンの ID.モデルは最大7,700ユーロも値引きして売られており、今後も自動車メーカー各社は、補助金に相当するような額の値引きをしてEV販売を支えようとするでしょう。このままでは、内燃車で得た利益でEVの赤字を補填する構造がさらに深刻化するため、ドイツメーカーは抜本的なEVのコスト低減を迫られています。 

画像: 昨年のIAAミュンヘンで市街地の特設ブースで展示された4ドアクーペスタイルのフォルクスワーゲンID.5GTX。

昨年のIAAミュンヘンで市街地の特設ブースで展示された4ドアクーペスタイルのフォルクスワーゲンID.5GTX。

This article is a sponsored article by
''.