来場者向けモビリティとしての可能性も今後の検討材料か
「人の能力と可能性を拡張してくれるモビリティ」として「ジャパンモビリティショー2023」(2023年10月28日〜11月5日に一般公開)でホンダが展示した「ユニワン」は、ひとり乗りの着座型スマートモビリティだ。
仕事場で移動することの多い職種や、アミューズメントパーク、レジャーなどで活用できる乗りものとして開発され、クルマやバイクのように手と足で操作するのではなく、座った状態で体重移動することによって進む方向や速さを調整できる。これにより、両手を自由に使えるだけでなく、バランスもとりやすくなるという。
ホンダは従来からひとり乗りのコンパクトなモビリティを研究開発しており、2012年にはユニカブ(UNI-CUB)、2013年にはユニカブβを発表、日本科学未来館(東京都江東区)や羽田空港(東京都大田区)などで実証実験を行ってきた。今回のユニワンはここで培った技術をベースとし、「人協調バランス制御技術」や車輪機構「Honda Omni Traction Drive System」をさらに進化させているという。
また、着座位置を上下方向に調整できる機能を持っているため、立っている人と接する時は座面を上昇させ、また子どもや座っている人と接する時に下降させて目線を相手に合わせることもできる。これは接客を仕事とする人にとって貴重な機能となるだろう。
こうした特性を活かし、ホンダはユニワンを静岡県御殿場市にある大型アウトレットモール「御殿場プレミアム・アウトレット」に有償で試験導入することを決定した。2023年11月10日〜2024年3月末の期間に2台を稼働させる。これにより、ユーザーニーズへの対応と事業性を検証、そして活用シーンの広がりを検討するのだという。
知ってのとおり御殿場プレミアム・アウトレットの敷地は広大だ。2000年に開業して以来4度の拡張工事が行われて、現在は東京ドーム約9個分の敷地の中に300近い店舗が並んでいる。これだけ広いショッピングモールだ、管理・運営するスタッフはかなり多い。
そのうえ、敷地内をつねに歩き回っているため体への負担も大きく、スタッフの中には年齢や体力など様々な理由で不安を覚える人もいて、人材確保の面での課題にもなっている。
こうした課題の解決案のひとつとしてユニワンが試験的に導入される。2023年11月からの導入では1日あたりの移動距離が長い警備スタッフの足として稼働し、疲労の軽減やお客とのコミュニケーション活性化状況、また設置場所や充電タイミング、セキュリティ性など本格運用に向けての検証が多方面から行われることになる。
現段階においてはスタッフのためのモビリティとしての運用を検証されるが、将来的には来場者向けモビリティとして運用する可能性、そしてIoTをはじめとするデジタル技術の活用も視野に開発が続けられるようだ。
ホンダ ユニワン 主要諸元
●全長×全幅×全高:650×580×950mm(ハイポジション)
●全長×全幅×全高:770×680×770mm(ローポジション)
●重量:70kg
●乗員最大重量:110kg
●最高速度:6km/h(4km/hにも設定可能)
●航続可能距離:8km
●バッテリー:交換式リチウムイオンバッテリー
●充電時間:最長2時間