空飛ぶクルマ(eVTOL)の実用化に向けて日本を始め世界中で開発が加速しているが、すでにその先を見据えた次世代eVTOLの開発も始まっている。去る10月5日(現地時間)にオーストリアのCycloTech(サイクロテック)社が発表した「CruiseUp(クルーズアップ)」は、プロペラではなくサイクロローターと呼ばれる独自開発の浮力/推進機構を採用した次世代eVTOL。果たして、どのように空を飛ぶのだろうか?(写真:CycloTech)
ヤマト運輸の中小型貨物用ドローンが先行か?
まるでSF映画のような技術だが、この画期的システムは理論的には10年近く前から研究されてきた。さまざまな実験やベンチテストを経て2021年10月には屋内試験場にて初飛行に成功、そして2023年8月30日からは屋外での飛行実験を開始している。
屋外初の飛行実験に使われたのは、「Bumblebee2.0」と名付けられた実験機。動画が公開されているので、ぜひそちらの映像もご覧いただきたいが、翼もプロペラもないのに宙を浮く機体の姿は一見の価値がある。プロペラ式と比べて騒音が極めて低いのもサイクロローターの特徴だ。現状は59dBほどまで下げられているが、これは掃除機と同レベルである。
現時点では、人を載せて運行するサイクロローター式eVTOLの実現にはまだ時間がかかりそうだ。とは言え、実は日本ではヤマトHDがサイクロローターを使った中小型貨物ドローンの実用化に向けた取り組みを進めている。サイクロテック社との技術提携によって開発されている「CCY-01」は、長さ2700mm、高さ2400mm、PUPA(ピューパ)と呼ばれるトランク部分の最大積載量45kgを含めた総重量は280kg。巡航速度は120km/h、航続距離は40kmだ。
ヤマトHDはその導入時期などにはまだ触れていないが、「空の領域を活用したさらなる高付加価値のビジネスモデル構築を計画、促進していきます」と語っており、将来の実用化は大いに期待できそうだ。
ようやく“空飛ぶクルマ”が実用化されようとしている中、すでにテック企業はその先を見据えた次世代技術の開発に邁進している。映画でしか見たことのなかった世界が、着実に近づいてきているのだ。