空飛ぶクルマ(eVTOL)の実用化に向けて日本を始め世界中で開発が加速しているが、すでにその先を見据えた次世代eVTOLの開発も始まっている。去る10月5日(現地時間)にオーストリアのCycloTech(サイクロテック)社が発表した「CruiseUp(クルーズアップ)」は、プロペラではなくサイクロローターと呼ばれる独自開発の浮力/推進機構を採用した次世代eVTOL。果たして、どのように空を飛ぶのだろうか?(写真:CycloTech)

可変ブレードで浮力と推進力を生み出す

空飛ぶクルマ(eVTOL)が、いよいよ実用段階に近づいている。日本のSkyDrive社がスズキとタッグを組んで2024年春から生産を開始するのを始め、米国カリフォルニア州に本拠を置くASKA社が陸空両用(空を飛ぶだけでなくクルマとして陸上も走れる!)の「A5」で飛行実験および公道での走行試験を開始するなど、世界中でさまざまなeVTOL開発がヒートアップしている。ホンダやトヨタなど既存の自動車メーカーも開発、実用化に向けて本腰を入れている。

現在、主流となっているのは浮力と推進力を翼とプロペラで得るタイプ。ゆえに“クルマ”とは名ばかりで、見た目は巨大なドローンのようでもある。垂直方向と横方向への角度移動のために複数のプロペラの複雑な制御機構が必要となり、構造自体も大掛かりになる。さらに各プロペラの方向を変更する際にタイムラグが発生するので、操縦の難度も高い。機体も大きくなりがちで、広い駐機スペースが必要になるなどの課題は残っている。

そんな現状の課題を解消すべく、すでにその先を見据えたさまざまな次世代技術が開発中だ。今回発表された「CruiseUp」に搭載されている「サイクロローター」はプロペラではなく、ドラム缶型の筐体の中で可変ブレードが回転することで浮力と推進力をコントロールする画期的な技術だ。開発したのは、オーストリアに本拠を置くCycloTech社(以下、サイクロテック)である。

サイクロローターには、クルマの車輪のように回転するハブに複数のブレードが付いている。ブレードとつながる回転軸の中心=ハブの位置を移動することでブレードの角度が変わり、気流の方向が瞬時に変わるのが基本的な構造だ。推進力の方向は360度自由に可変でき、離着陸時の垂直方向から水平方向となる航行時までタイムラグなくシームレスに変化させることができる。さらに空中にいながらブレーキもかけられる。プロペラ式のeVTOLに比べ、より“クルマ”に近いリニアな運動特性が得られるのだ。

ちなみにクルーズアップのサイズは、全長6.7mで全幅は3.3m。平均的なクルマより50%ほど大きいが、多くのプロペラ式eVTOLのような広い駐機スペースは不要だ。合計6基のサイクロローターにより150km/hで走行し、一充電あたりの航続距離は100kmと発表されている。

This article is a sponsored article by
''.