世界初の技術で諸外国を追い越すことを視野に
今回発表された「走行中給電」、原理的にはスマホの『置くだけ充電(ワイヤレス充電)』と同じだ。地面に埋め込まれた「送電コイル」と自動車側に搭載される「受電コイル」間の電磁誘導(磁界共振結合)によって、電力を送る仕組みとなっている。
この原理自体は中学校でも習う物理の法則でありスマホではすでに実用化されている技術にも関わらず、自動車のワイヤレス充電が実用化されてこなかったのはなぜだろうか。
それはスマホの「置くだけ充電」を使ったことがある方なら想像がつくかも知れないが、まず磁場を利用して送電している関係上、送電コイルと受電コイルの距離次第で送電効率が大きく変動してしまうということがある。さらに自由に動き回る自動車との相性が悪いからだ。
従来、諸外国が先行して研究開発してきた走行中給電技術は、いずれも車両の底面に受電コイルを搭載していたのだが、この方式だと、車両の積載量や路面ギャップなどの要因で送電/受電コイル間の距離が変化してしまうため、最高出力を落とす必要があった。
つまり、過積載でコイル間距離が変化することを考慮して、自動車のバッテリーが許容する充電電力から逆算して送電電力を抑えなければならず、効率/安全面での不安材料となっていたわけだ。
しかし、今回、東大その他関係機関が開発したシステムでは、車輪横のバネ下部分に搭載しておりコイル間の距離(車載受電コイルと路面との垂直距離)が変化しないため、バッテリーが許容する最大出力での充電が可能になった。
これが何を意味するかというと、世界各国に研究開発において遅れをとっていた日本の「走行中給電」技術が、今回の技術的ブレイクスルーで一気に世界のスタンダード仕様に躍り出るかも知れないということだ。EVによる新たなモビリティ社会実現のカギとなってくる注目すべき実証実験というわけだ。今後、早ければ5年後の2028年には事業者でのサービスを開始できるように計画を進めているとのことだ。