4年に一度行われる「デトロイト3」の自動車メーカーと全米自動車労働組合(UAW:自動車、航空、農業の各産業の労働者の組合組織で、米国、カナダ、プエルトリコで約40万人の現役ワーカーと58万人の退職者がいる。設立は1935年)の労働協約の交渉が9月14日の期限までに決着せず、翌日から史上初となる3社に対する同時ストライキが実施されてから1週間が経ちました。依然両者の溝は深く、UAWは各社1ヶ所ずつの完成車工場に加えて、GMとステランティスの全米38ヶ所の部品センターでのストライキに入りました。(タイトル写真はUAWのFacebookベージより。MOPARはステランティスの部品のブランド名)

CEOの報酬はワーカーの700倍

一方で、エコノミストの試算では、2008年の自動車危機で譲歩した結果、デトロイト3のワーカーの実質賃金は19%下がっているとも言われており、実際に米国労働省の最新の統計でも労働者の平均収入は時給32ドル(残業代やボーナスを含む)なので、UAWはもはや産業界で特別に高い賃金を得ているわけではないようです(かつて筆者がデトロイト近郊のマツダフラットロック工場に駐在していた1990年代前半は、UAWの賃金や労働条件はブルーカラーの中で突出しているという認識がありました。1987年に竣工したマツダの工場は、日系自動車メーカーでは唯一UAWに加入し、労働者は通常の組合員の賃金より少し低いレベルでスタートしましたが、当時のニューヨークタイムズの記事から、1990年のUAWワーカーの時給は15〜16ドルだったことが確認できます。30年後に、デトロイト3の売上高は1.5倍、税引き前利益は約3倍になっていることを考えると、労働者の賃金はそれほど上がっていないようです)

また、NewsweekのUAW組合員の投稿記事によれば、1973年の組合員の時給は5.5ドルで、これは今日に換算すると38ドルに相当するとのことです。メアリー・バーラCEOは時給13,800ドルであるのに対し、期間労働者のそれは16.6〜20ドルで700倍もの差があり、バーラ氏はワーカーの3年分の賃金を1日で得ていると指摘しています。このような賃金格差の議論は1990年頃にもあって、その頃のGMの会長の年収は200万ドル(約3億円)前後でした。CEOの年収は30年間で10倍になっていますが、労働者の収入はせいぜい1.7倍程度ということになります。

「フォードは真摯に交渉している。」3社を天秤にかける戦略

闘う姿勢を明確にして今年初めの選挙で勝利し、第15代UAW会長に就任したショーン・フェイン氏(54)は、「フォードは交渉に真摯に向き合い、歩みよりが見られる」と評価して、フォードへのストライキは拡大しませんでした。ストを拡大されたGMやステランティスは、「UAW指導部は、会社を混乱に貶めることを労働者の条件向上より優先している」と批判を強めています。UAWは、ビッグ3の最も大きな収益源であるフルサイズピックアップトラックや大型SUVの工場にはまだストを打っていませんが、今後さらに拡大する際には、そういった工場を標的にしてくるでしょう。

画像: 組合員のデモに加わるUAW会長のショーン・フェイン(中央)。初めて組合員の直接選挙で選ばれた。労働協約改善への断固たる姿勢をFacebook Liveで直接組合員に語りかけるなどして支持を集めている。

組合員のデモに加わるUAW会長のショーン・フェイン(中央)。初めて組合員の直接選挙で選ばれた。労働協約改善への断固たる姿勢をFacebook Liveで直接組合員に語りかけるなどして支持を集めている。

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