日本のドライバーも5人に1人が子どもの車内放置を経験
1年以上前のデータだが、2022年7月15日に三洋貿易株式会社が公表した「子どもの車内置き去り実態調査」によると、子供を乗せて運転するドライバー2652人のうち、直近1年以内に子どもだけを残してクルマを離れたことがあるかという質問に対して、5人に1人の割合(22%)で経験があると回答したという。また、子どもだけがクルマに残されている状況を見かけても、87%の人がその場を素通りしている。
一方では、回答者の70%が事故の原因として“保護者の意識が低い”と認識しているという回答結果だった。つまり、監督者である保護者の自己責任に帰されているのだ。ドライバーにも「ちょっとだけなら大丈夫だろう」という油断があることは否めないが、「自分だけは大丈夫、そんなことはしない」という意識が垣間見える。
北米の「Kids And Cars.org」という団体の調査では、車内に取り残された子どもが熱中症で亡くなる事故のうち、50%以上が“無意識の取り残し”であったという結果を発表している。ちなみに北米では、毎年40人以上の子どもが車内放置の結果亡くなっているという深刻な事態にあることは知っておきたい。
ヒューマンエラーを防ぐ車内監視システムの搭載が加速
当事者が無意識、つまり“うっかり”である以上、何らかのデバイスによる注意喚起もしくは対策がなければ、痛ましい事故はこれからも続いてしまう。日本では“自己責任”で片付ける傾向が強いようだが、それだけでは、痛ましい事故をゼロにすることは不可能だ。つまり、ドライバーなら誰もが当事者になるかもしれないのである。
もちろん、自動車メーカーおよびサプライヤーもその対策に乗り出しており、とくに欧米そして中国や韓国では、車内監視システムにドライバーだけでなく、幼児やペットなどの置き去りを検知する高性能レーダーシステム「CPD(Child Presence Detection)」の開発が進んでいるようだ。
欧州で自動車の安全性能を評価するユーロNCAPでは、2023年より新たな評価基準として「CPD」を追加導入した。北米では、2025年に導入予定の新たな車内安全基準に「CPD」の搭載が盛り込まれるなど、公的団体や政府による後押しも活発になっている。
たとえば、安全性能で定評のあるボルボも2022年11月に発表した「ボルボEX90」に初めて「CPD」を搭載した。クルマにロックをかけるときに車内のレーダーシステムが生体を認識するとロックがかからない。また、生体が認識されるとエアコンが稼働し続ける設定も可能になっている。
またBYDの最新コンパクトEV「ドルフィン」(2023年9月20日正式発表)は、車内2カ所に取り付けたミリ波レーダーによる監視を行い、ドライバーがクルマを離れる際に幼児やペットなど生体が車内に残っていることを検知すると、ライトの点滅とホーンで車外に知らせるシステムを標準装備している。