「IAAモビリティ 2023」は、2021年にフランクフルトから開催地を移した際に、メッセ会場に加えて、ミュンヘン市の旧市街（アルトシュタット）のパブリックスペースを展示場に当てたことがユニークでした。ひたすら広大な首都ベルリンや、旧市街が第二次世界大戦の空爆でほぼ失われたフランクフルトに比べ、ミュンヘンには古い教会やバイエルン皇帝時代の壮麗な宮殿が今も残っています。古都の建造物の合間に設けられた展示空間を、そぞろ歩きしながらクルマを眺められる体験は、ミュンヘン市民にとってもとても好ましいもののようです。
メルセデスはやっぱり王宮のど真ん中に布陣
そこからほんの100mばかり北に上がるとレジデンツへの入り口があり、まずキュプラ（セアトのスポーツブランド）の展示ドームをすぎて中庭に出ると、そこはメルセデスベンツが占有するスペースです。
今回のハイライトは、EV専用のプラットフォーム上に設計された「コンセプトCLAクラス」でボディカラーが赤なので、会場全体も赤をモチーフに構成されています。全部で15台の展示車は、EQAからEQSマイバッハまでほぼ全てのEVとプラグインハイブリッドのラインアップを置き、唯一のガソリン車はAMGメルセデスGTです。
フランクフルトモーターショーの時代もメルセデスはホールを一棟借り切っていたが、ミュンヘンに移っても王道を行く。
中央には2階建ての完全クローズドの建造物が作られ、2階に上がって中に足を踏み入れると、眼下の真っ赤なコンセプトCLAに天井からライトが降り注ぎ、床面と背後のパネルに鮮やかなプロジェクションマッピングのショーが映し出されるという迫力あるものでした。
CLAはエアロフォルムと楕円形の中にスリーポインテッドスターをあしらったヘッドライトシグナチャーが印象的です。インテリアは最近のメルセデスの趣向に沿ってクロームを多用して派手な印象ですが、最新のソフトウェアによるコネクト機能や安全機能を搭載します。メルセデスは「クラスを定義する（Defining Class）」とうたっており、このクラスの新たなベンチマークとなるクルマを志向しているようです。
星形マークがしつこいくらいだが、1990年代にCクラスを出した時と同様、小さくてもメルセデスを主張する装置としては有効か。
