2023年8月23日、ENECHANGE(エネチェンジ)株式会社は、米国WiTricity(ワイトリシティ社)との協業により、日本国内におけるEV向けワイヤレス充電ソリューション(非接触充電システム)の導入に向けた実証実験を検討していることを発表した。充電ケーブルを接続することなく“駐車しているだけで充電できる”システムが、いよいよ日本でも実用化されるかもしれない。(タイトル写真:Witricity)

ワイヤレス充電は双方向充電も可能

EVに充電するには、(普通・急速を問わず)充電器と車両を充電ケーブルで接続する必要があるのはだれでも知っている。このケーブルの接続というのがなかなか厄介だ。ケーブルは決して軽くはないので取り回しには気を使うし、車両の充電ポートの位置もさまざまで駐車する方向を考えなければならない。

そこでケーブルに依らずに充電できる「ワイヤレス充電=非接触充電」というシステムが考案され、その開発に日本を含め世界中の企業が鎬を削っている。すでに実証実験の段階にはあるのだが、実用/普及レベルとなるとまだ少々時間がかかりそうな段階である。

■ワイヤレス充電のメリット

ワイヤレスのメリットを簡単にまとめると以下のようになる。
・労力の低減:充電のたびにケーブルを接続する煩わしさから解放される。また悪天候時にも濡れたり手や衣服を汚したりすることがない。
・メンテナンスの軽減:ケーブル接続では破損や消耗によって部品交換する必要があるが、ワイヤレス充電ではそもそも可動部品がないのでその心配がない。
・安全性の向上:人体への影響がなく、感電などの心配はない。また、充電中にケーブルに引っかかって転倒したり、車両にケーブルをぶつけてダメージを与えてしまうことがない。
・スペースの削減:ケーブルを収納するスペースが不要で駐車スペースを有効活用できる。
・駐車位置の自由度が高い:EVによって異なる充電ポートの位置を気にせず、また駐車位置が少しずれていても充電可能。
・双方向充電が可能:いわゆるV2HやV2Gにも対応できる。

画像: 停めておくだけで充電できるワイヤレス充電。ケーブルを使った充電との比較でも充電効率はむしろ高いほどだという。(写真:WiTricity)

停めておくだけで充電できるワイヤレス充電。ケーブルを使った充電との比較でも充電効率はむしろ高いほどだという。(写真:WiTricity)

そして、ドライバーがいない完全自動運転の時代がやってくれば、ワイヤレス充電はもはや必須の技術となることは意識しておきたい。

■ワイヤレス充電の仕組みと原理

ワイヤレス充電には「電磁誘導方式」と「磁界共鳴方式」があるが、ワイトリシティ社のワイヤレス充電は磁界共鳴方式を採用している。

磁界共鳴方式は、地上に設置された充電パッド(送電コイル)から、EVの下側に取り付けられた受電コイルに無線で電力を送信する方式。電磁誘導方式よりも長い空間距離の電力伝送効率に優れ、送受信コイルの位置や向きなどの自由度が高い。

地上最低高の低いスポーツカーからSUVまでカバーする。ワイトリシティの充電パッドは、家庭の駐車スペースから立体駐車場まで対応する地上設置型と、駐車スペースや縁石部に埋設する地中設置型がある。

画像: ワイヤレス充電システムの概念図。車両側には「受電コイル」と「AC/DC整流ユニット」を装着する必要がある。(写真:WiTricity.com)

ワイヤレス充電システムの概念図。車両側には「受電コイル」と「AC/DC整流ユニット」を装着する必要がある。(写真:WiTricity.com)

画像: 磁界共鳴方式を採用するワイトリシティ社のワイヤレス充電システム。写真は地上設置型。(写真:WiTricity)

磁界共鳴方式を採用するワイトリシティ社のワイヤレス充電システム。写真は地上設置型。(写真:WiTricity)

ワイヤレス充電は自動運転の時代に必須の技術

日本でもようやくEVの普及に弾みがついてきた。それに伴い、現在よりももっと便利で扱いやすい充電ソリューションを求める声も高まってくるだろう。もちろん、現時点でも普通/急速ともに急がれるのは充電インフラの拡充であり、エネチャージも2027年までに国内で3万台のEV普通充電器の設置を目標に掲げている。

とは言え、自動運転の実用化なども鑑みれば、ワイヤレス充電がいずれ必要不可欠なインフラとなるのは予想できる。

画像: エネチャージでは引き続き6kW普通充電器の設置を進めるとともに、ユーザー利便性向上と自動運転時代への対応を睨んだワイヤレス充電への取り組みも進めていくという。

エネチャージでは引き続き6kW普通充電器の設置を進めるとともに、ユーザー利便性向上と自動運転時代への対応を睨んだワイヤレス充電への取り組みも進めていくという。

エネチャージの狙いもまさにそこにある。既存の充電インフラの整備とともに、自動運転時代の到来にむけたインフラ整備への着手=ワイヤレス充電にいまから取り組みを始めることで、EV充電サービス事業の未来に向けて準備を進めていこうとしている。

今回の実証実験はその第一歩であり、今後のワイヤレス充電普及に向け、引き続きワイトリシティ社のサポートを行っていくとのことだ。

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