電気には直流(DC)と交流(AC)の2種類があるのはご存じかと思うが、EVにはその両方が使われている。一見、効率が悪そうな気もするのだが、それはいったいどういうことなのか。EVの基本的な構造を理解する上でも役に立つ、その理由を説明しておきたい。(タイトル写真はイメージ)

モーターには直流と交流のふたつが存在するが…

電気にはその流れ方の違いから「直流(DC)」と「交流(AC)」の二通りがある。直流は文字通り、電気の流れが一方向にまっすぐに流れる。すなわち+と−が一定だ。一方、交流は電気の流れが交互に変化する。これは+と−が交互に変わり、右から左に流れていたら、次には逆に左から右へと、電気の流れが交互に変化するのだ。

そしてEVには、直流(DC)と交流(AC)の両方の電気が使われている。その理由は簡単に言えば、EVに搭載されているバッテリーはすべてが直流で、一方モーターには交流(AC)モーターが使われているからだ。

そもそも電池やバッテリーなど電気を蓄積したものから出てくる電流はすべて直流、充電するのも直流だ。そしてモーターには、直流で駆動する直流(DC)モーターも存在する。実のところ、かつては一定速度で回転させるには交流(AC)モーター、回転速度を変化させるのには直流(DC)モーターという使いわけがあった。

画像: 日産リーフのバッテリーとパワーユニット。バッテリーからの直流電流は交流に変換されてモーターを動かす。

日産リーフのバッテリーとパワーユニット。バッテリーからの直流電流は交流に変換されてモーターを動かす。

それは交流(AC)モーターは、交流(AC)の電気の流れの向きの変わる速度(周波数)によって回転数が定まるという仕組みがあったからだ。そのため、家庭用電源のように周波数が一定の場合、交流(AC)モーターは回転数も一定になってしまう。

それに対して直流(DC)モーターは、電圧を変化させることで、回転数をコントロールすることが可能だった。そのため、回転数を変化させる用途には直流(DC)モーターが使われていたのだ。

しかし、エレクトロニクス技術が進化することで、一定回転=交流(AC)モーター、変化する回転=直流(DC)モーターという常識が変わってきた。技術の進化により、インバーターを使って、交流の周波数を自在に制御できるようになったのだ。

そうなると、直流(DC)モーターよりも交流(AC)モーターの方が、サイズを小さく、より高性能にすることが可能となった。そのため、現在のEVは、そのすべてで交流(AC)モーターが使われるようになっているのだ。

つまり、電力を蓄えたり放出したりする電池が直流(DC)でありながらも、モーターが交流(AC)のため、EVでは、直流(DC)と交流(AC)の両方の電流が使われるようになっているというわけだ。

●著者プロフィール
鈴木 ケンイチ(すずき けんいち)1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。

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