去る7月25日より、BMWが燃料電池車(FCEV)の市販に向けて「BMW iX5ハイドロジェン」の実証実験を日本でも開始した。国内ではいまひとつ盛り上がりに欠けるFCEVだが、実は海外ではEVと並ぶ次世代ゼロエミッションビークルとしてその実用化が加速している。その最新事情を解説する。(タイトル写真はBMW iX5ハイドロジェン)

実は海外から引く手あまたのトヨタ燃料電池スタック

EVがもてはやされている昨今だが、世界にはもうひとつのトレンドが生まれつつある。それが水素を酸素と反応させて作り出した電気でモーター駆動する「燃料電池車(FCEV)」だ。EVの一種なのだが、日本ではいまひとつ盛り上がりに欠ける観もある。実は欧米や中国では自ら発電するFCEVへの関心が急速に高まっている。

去る6月13日に開催された「トヨタ テクニカル ワークショップ2023」によると、2030年の水素需要は中国を筆頭に欧米などで年間5兆円規模になると見込まれるという。すでにトヨタはMIRAIの水素ユニットを使った燃料電池スタックの外販事業を開始しており、2030年には少なくとも年間10万台規模の発注があると予想している。

画像: 海外から引く手あまたのトヨタ燃料電池スタック( 「トヨタ テクニカル ワークショップ2023」資料より)

海外から引く手あまたのトヨタ燃料電池スタック( 「トヨタ テクニカル ワークショップ2023」資料より)

その用途の大半が商用車用だが、乗用車用途も少なくない。見込みを上回る発注があった場合には(20万台〜規模)、量産効果も相まってコストを50%まで圧縮することが可能になる。自社ブランド車でもMIRAIに加え、2023年秋には新型クラウンセダンに燃料電池搭載車をラインナップする。また、国内ではすでにバス(トヨタ「SORA」)やトラックを中心に、船舶や鉄道などあらゆるモビリティで実用化が加速している。

EVに比べれば、まだビジネスの規模は小さいかもしれないが、クルマではなく燃料電池スタックの需要がそれだけあるというところは注視しておく必要があるだろう。

画像: 2018年から路線バスとして運行を開始しているトヨタの「SORA」。

2018年から路線バスとして運行を開始しているトヨタの「SORA」。

BMW iX5ハイドロジェンが市販に向け日本でも実証実験

2013年にトヨタと提携して以来、一度は中断していたFCEVの開発を再開していたBMW。2023年3月にトヨタの燃料電池スタックと自社開発の水素専用コンポーネンツを搭載する「iX5ハイドロジェン」を公開した。

画像: 水素一充填あたりに必要な時間はおよそ3分とガソリンの給油並み。最大航続距離は504km(WLTP)と公表されている。

水素一充填あたりに必要な時間はおよそ3分とガソリンの給油並み。最大航続距離は504km(WLTP)と公表されている。

およそ100台のプロトタイプを生産して、ドイツ本国や北米で公道を使った実証実験を行っており、去る7月25日からは日本でも実証実験を開始した。日本各地を実走してデータを収集するだけでなく、官公庁や行政機関、大学などを訪問して各方面の専門家から寄せられた意見をBMW本社へ送り、2020年代後半の市場投入に向けてブラッシュアップしていくという。

画像: トヨタ製燃料電池スタックを基にBMWが自社開発した水素用コンポーネンツを組み合わせる。

トヨタ製燃料電池スタックを基にBMWが自社開発した水素用コンポーネンツを組み合わせる。

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