燃料費はどれだけかかるのか?
ハイブリッドとPHEVでは、燃料費はどれだけ違うのだろうか。RAV4の2.5Lハイブリッドの「G」グレードの4WD(E-Four)の燃費性能は、20.6km/L(WLTCモード)となる。これで年間1万kmを走ると想定すると、必要となるガソリンは、約485.4Lだ。1Lのガソリン価格を170円として計算してみると、年間の燃料費は8万2518円になる。
一方、PHEVの燃料費はどうか。こちらは計算が難しい。満充電してあれば、最大95kmまでEV走行ができる。つまり、エンジンを使わずにガソリンを1滴も消費せずに済む。毎日、出かけても、95km未満で帰宅していれば、年間でガソリンを使わずに走行することができる。また、一方で、充電なしで、ガソリンだけで走ることもできるのだ。そこで、「電気だけで走行」と「ガソリンだけで走行」を計算し、その間の金額を目安としたい。
まず、電気だけで走るときの費用を計算してみたい。RAV4のPHEVの「Z」グレードの電費性能は、155Wh/km(WLTCモード)となる。1km走るのに消費する電力が155Wh(=0.155kWh)を意味する。この性能で、1万kmを走ると消費する電力は1550kWh。電力料金を1kWh=25円で計算すると、3万8750円になる。電気だけで走行すれば、ハイブリッドよりも4万3768円も安いことになるのだ。
一方、ガソリンだけでPHEVを走らせると、その費用はどうなるのか。RAV4のPHEVの「Z」グレードの燃費性能は22.2km/L(WLTCモード)となる。これで1万kmを走ると消費するのが約450L。1Lのガソリン価格が170円とすると、450Lのガソリン価格は7万6500円。普通のガソリンだけで走ってもPHEVは、ハイブリッドよりも燃料費は安くなる。
燃料費で見ると、電気で走ろうが、ガソリンで走ろうが、どちらもPHEVが安いということになる。
ハイブリッドとPHEVの走りの違いは?
最後に価格には表れない、ハイブリッドとPHEVの走りの違いは、どうなっているのか。2.5Lのハイブリッドの「G」の4WD(E-Four)のシステム最高出力は163kW(222ps)となる。一方、PHEVの「Z」の4WD(E-Four)のシステム最高出力は225kW(306ps)となる。なんと62kW(84ps)もの差があるのだ。
どちらも同じ2.5L直4エンジン「A25A-FXS」のダイナミックフォースエンジンを使っているけれど、組み合わされるフロントのモーターが違う。ハイブリッドが型式「3NM」の88kW(120ps)/202Nmなのに対して、PHEVには型式「5NM」の134kW(182ps)/270Nmもの強力なモーターが使われている。さらに駆動用の二次電池の容量も圧倒的にPHEVが勝る。
この強力なモーターとバッテリーのおかげでPHEVは、ハイブリッドに勝るパワーと優れた燃費性能、さらには最大95kmものEV走行を実現しているのだ。走りという面では、圧倒的にPHEVが勝ると言っていいだろう。
振り返ってみれば、新車購入時はハイブリッドがお得となるが、燃料費と走りはPHEVが勝っている。ただし、新車購入時の87万9000円もの価格差を燃料費でひっくりかえすのには、10年以上の歳月が必要であり、現実には、ほぼ回収できないと考えた方がいいだろう。
お金の面だけでいえば、「RAV4」のハイブリッドとPHEVでは、ハイブリッドがお得だ。しかし、走りのパフォーマンスとEV走行はPHEVならではの魅力。その魅力が価格差となっていると理解すべきだろう。
●著者プロフィール
鈴木 ケンイチ(すずき けんいち)1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。