ホンダの新事業創出プログラム「IGNITION(イグニッション)」から生まれたベンチャー企業である「株式会社 ストリーモ」が、今月施行の改正道路交通法に対応した特定小型原動機付自転車仕様の「ストリーモS01JT」を6月28日に発表した。独自の「バランスアシストシステム」により、停止時にも自立する機能を有するストリーモだが、この機能はどのような仕組みで実現できたのだろうか? 最新の「ストリーモS01JT」の細部を観察し、考察してみた。

生まれ変わった新型ストリーモのハンドリングは、大幅に安定志向に振っていた!?

発表会でお披露目された特定小型原付仕様の新型ストリーモS01JTは、2022年のプロトタイプとの違いが一瞥しただけではわからないだろう。許可された歩道を走行する際に、最高速度が6km/hに制限されていることを点滅で伝える緑色の最高速度表示灯の存在が、最もわかりやすい外観上の違いである。

しかし新型は、ジオメトリーなどを変更することで安定志向のハンドリングにするなど、さまざまな改良が加えられている。プロトタイプの試乗をしたときの記憶をよみがえらせつつ新型の試乗をしてみたが、説明どおりかなり安定方向寄りのハンドリングになっていることにすぐ気付いた。

昨年試乗したプロトタイプは、今思えばハンドリングがクイック気味といえた。一方新型はクイックさは影を潜め、老若男女・・・幅広い層の人が初めて接したときでも安心して走らせることができるだろうと思わせた。端的にいえば、明らかにプロトタイプよりも乗りやすい1台に仕上がっている。

画像: 発表会の場にて、ストリーモS01JTに乗車する株式会社ストリーモ代表取締役・技術責任者の森 庸太朗さん。新型はプロトタイプに比べモーターのトルクがアップしているため、登坂能力が向上しているのも特徴だ。 striemo.com

発表会の場にて、ストリーモS01JTに乗車する株式会社ストリーモ代表取締役・技術責任者の森 庸太朗さん。新型はプロトタイプに比べモーターのトルクがアップしているため、登坂能力が向上しているのも特徴だ。

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画像: 2022年に公開された、ストリーモのプロトタイプ。 www.honda.co.jp

2022年に公開された、ストリーモのプロトタイプ。

www.honda.co.jp
画像: 前輪のハブモーターが変更されたことに伴い、フロントブレーキはプロトタイプのドラム式から、機械式ディスク式に変更されている。

前輪のハブモーターが変更されたことに伴い、フロントブレーキはプロトタイプのドラム式から、機械式ディスク式に変更されている。

ジオメトリーの変更のほか、モーターを制御するプログラムのブラッシュアップ、力強さを増したモーター、そして細かなセッティングの煮詰め・・・などが、新型を乗りやすいマイクロモビリティに仕上げている。

なおコストダウンのためにすべてのタイヤを同じものに揃えるのは比較的安価な乗り物には良くあることだが、ストリーモS01JTは完璧なマッチングを追求して前輪と後輪のサイズ(幅)が異なるものを採用している。これらタイヤについては数多くの種類の製品をテストして、パターンが与えるハンドリングへの影響を吟味して、ベストのものを選定したそうだ。

上記はストリーモ開発の、数多くのこだわりの部分の一例であるが、良い製品を作ることをとおして、人々を幸せにする・・・というホンダスピリット的なものは、ベンチャー企業であるストリーモにも受け継がれているのだろう。

画像: 折りたたんだ状態で立てて、後輪を転がして移動することや、車両などに積載することが可能なのもストリーモの大きな特徴。バッテリーを含む車重は24kgで、成人男性であれば問題なく持ち上げることができるだろう。

折りたたんだ状態で立てて、後輪を転がして移動することや、車両などに積載することが可能なのもストリーモの大きな特徴。バッテリーを含む車重は24kgで、成人男性であれば問題なく持ち上げることができるだろう。

電動キックボードの実証実験期間中、傍若無人に交通ルールを無視して走行する者や、平然と飲酒運転をする者の非道ぶりが報道されたこともあって、この手の乗り物は「不逞の輩」が好んで乗る者というイメージを持つ人は少なくないだろう。

しかしストリーモの顧客層はそういうタイプの人たちの、真逆のタイプの人たちといえるだろう。2020年に販売された限定モデルの購入者は、40〜50代の人が多かったそうだ。一般的な電動キックボードよりも高価格ということも、比較的懐が豊かなオトナの購入者が多い理由のひとつだろう。車道の逆走や歩道の爆走をするようなタイプの人は、ストリーモの客層のメインになりにくいのは確かだと思われる。

運転免許を返納し、公共交通の便が悪い地方で「移動」に困っている人たちにとって、ストリーモはそんな悩みを解消してくれるモビリティになれるポテンシャルを有している。19世紀末の、自動車黎明期の英国で生まれた「赤旗法」の例などが示すとおり、いつの時代も新しい乗り物は歓迎の声だけでなく、非難の声も受けてきたものだ。制度がスタートしたばかりで、今のところ悪い評判を口にしたい人が多い特定小型原付の、良いイメージの牽引役になることをストリーモには期待したい。

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