生まれ変わった新型ストリーモのハンドリングは、大幅に安定志向に振っていた!?
発表会でお披露目された特定小型原付仕様の新型ストリーモS01JTは、2022年のプロトタイプとの違いが一瞥しただけではわからないだろう。許可された歩道を走行する際に、最高速度が6km/hに制限されていることを点滅で伝える緑色の最高速度表示灯の存在が、最もわかりやすい外観上の違いである。
しかし新型は、ジオメトリーなどを変更することで安定志向のハンドリングにするなど、さまざまな改良が加えられている。プロトタイプの試乗をしたときの記憶をよみがえらせつつ新型の試乗をしてみたが、説明どおりかなり安定方向寄りのハンドリングになっていることにすぐ気付いた。
昨年試乗したプロトタイプは、今思えばハンドリングがクイック気味といえた。一方新型はクイックさは影を潜め、老若男女・・・幅広い層の人が初めて接したときでも安心して走らせることができるだろうと思わせた。端的にいえば、明らかにプロトタイプよりも乗りやすい1台に仕上がっている。
ジオメトリーの変更のほか、モーターを制御するプログラムのブラッシュアップ、力強さを増したモーター、そして細かなセッティングの煮詰め・・・などが、新型を乗りやすいマイクロモビリティに仕上げている。
なおコストダウンのためにすべてのタイヤを同じものに揃えるのは比較的安価な乗り物には良くあることだが、ストリーモS01JTは完璧なマッチングを追求して前輪と後輪のサイズ(幅)が異なるものを採用している。これらタイヤについては数多くの種類の製品をテストして、パターンが与えるハンドリングへの影響を吟味して、ベストのものを選定したそうだ。
上記はストリーモ開発の、数多くのこだわりの部分の一例であるが、良い製品を作ることをとおして、人々を幸せにする・・・というホンダスピリット的なものは、ベンチャー企業であるストリーモにも受け継がれているのだろう。
電動キックボードの実証実験期間中、傍若無人に交通ルールを無視して走行する者や、平然と飲酒運転をする者の非道ぶりが報道されたこともあって、この手の乗り物は「不逞の輩」が好んで乗る者というイメージを持つ人は少なくないだろう。
しかしストリーモの顧客層はそういうタイプの人たちの、真逆のタイプの人たちといえるだろう。2020年に販売された限定モデルの購入者は、40〜50代の人が多かったそうだ。一般的な電動キックボードよりも高価格ということも、比較的懐が豊かなオトナの購入者が多い理由のひとつだろう。車道の逆走や歩道の爆走をするようなタイプの人は、ストリーモの客層のメインになりにくいのは確かだと思われる。
運転免許を返納し、公共交通の便が悪い地方で「移動」に困っている人たちにとって、ストリーモはそんな悩みを解消してくれるモビリティになれるポテンシャルを有している。19世紀末の、自動車黎明期の英国で生まれた「赤旗法」の例などが示すとおり、いつの時代も新しい乗り物は歓迎の声だけでなく、非難の声も受けてきたものだ。制度がスタートしたばかりで、今のところ悪い評判を口にしたい人が多い特定小型原付の、良いイメージの牽引役になることをストリーモには期待したい。