セダンにはFCEV(燃料電池車)をラインナップ
2023年4月12日に、まだ未発売のクラウン「スポーツ、セダン、エステート」という残る3モデルについて追加情報が公開された。その中でとくに興味深いのは採用されるパワートレーンについてで、このことから改めてトヨタの「マルチパスウェイ」を知ることができる。さて、公開された新たな情報は以下のとおりだ。
■クラウン スポーツ
ボディサイズ:全長4710×全幅1880×全高1560mm
ホイールベース:2770mm
パワートレーン:HV(2023年秋頃発売予定)/PHEV(2023年冬頃発売予定)
駆動方式:4WD
タイヤサイズ:21インチ
乗車定員:5名
ボディ色:モノトーン6色/バイトーン5色
内装色:3タイプ
■クラウン セダン
ボディサイズ:全長5030×全幅1890×全高1470mm
ホイールベース:3000mm
パワートレーン:HV/FCEV(ともに2023年秋頃発売予定)
駆動方式:FR
タイヤサイズ:19インチまたは20インチ
乗車定員:5名
ボディ色:モノトーン6色
内装色:2タイプ
■クラウン エステート
ボディサイズ:全長4930×全幅1880×全高1620mm
ホイールベース:2850mm
パワートレーン:HV/PHEV(ともに2024年中に発売予定)
駆動方式:4WD
タイヤサイズ:21インチ
乗車定員:5名
※ボディ色、内装色とも情報未公開
数値はすべて開発中のものとされているが、市販車もほぼ変わらないだろう。まだまだ十分な情報とは言えないが、それでも得るものは大きかった。まず2022年の時点では明確にされていなかったクラウンの「全車電動化」が明らかになったことだ。すでに、予想はしていたがフラッグシップモデルをまずは完全に電動化したところに、トヨタが脱炭素に向けて着々と歩を進めていることがわかる。
「スポーツ」と「エステート」が全車4WDというのも想定の範囲内。前輪駆動ミディアムラージクラス用のTNGA-Kプラットフォームをベースに、前輪をハイブリッドで後輪をモーターで駆動する方式は「クロスオーバー」と同じだ。
目を惹くのは「セダン」だけが後輪駆動車で、HV(ハイブリッド車)とFCEV(燃料電池車)を揃えるということだ。HVは個人ユーザーを、FCEVは法人ユースを見据えた選定だろう。
同社のFCEVである「ミライ(MIRAI)」と関係があるのは明白だ。ちなみにミライのパッケージは、全長4975×全幅1885×全高1470mm。ホイはールベースは2920mmである。全長と全幅はデザインの差で違いがあるのが、全高は全く同じ。ホイールベースはクラウンセダンの方が80mm長い。
ミライは元町工場のクラウン用ラインで混流生産されているが、水素タンクの搭載工程など一部は専用ラインを使用する。今後はクラウンセダンFCEVもここに加わるだろう。量産効果も相まって、FCEVは特殊なクルマではなくなる可能性もある。脱炭素社会の実現に向けEV一辺倒ではなく、多様なパワーソースの選択肢を提供するトヨタの戦略「マルチパスウエイ」の一端を垣間見ることができる。
PHEVのEV航続距離は驚異の200kmを達成か
次なる期待はプラグインハイブリッド技術だ。トヨタは2021年7月に発売した2代目アクアに量産車で世界初となる「バイポーラ型ニッケル水素電池」を搭載した。以降に登場したハイブリッド車(新型レクサスRX、クラウンクロスオーバー)にも、バイポーラ型ニッケル水素電池を搭載している。この新世代電池の技術的な説明は省くが、とにかく薄くコンパクトな一方で、出力は従来のニッケル水素電池に対して大幅に高められている。
このバイポーラ技術は、PHEV車やEVに搭載されるリチウムイオン電池にも応用が可能だ。去る4月7日に開催された「トヨタ新体制方針説明会」では、EV航続距離を200km以上に高めたPHEVの発売も予告されているとあったが、それとの関係性は果たしてどうなのか。
クラウンスポーツPHEVの発売は2023年冬頃、同エステートPHEVは2024年中を予定しているとのことだ。この2車のPHEVに(従来のリチウム電池に代わり)バイポーラ技術を採用したリチウムイオン電池が搭載されれば、EV航続距離200kmが実現されるかもしれない。
残るピースは、このラインナップにまだバッテリー「EV」がないことだ。もちろんEVは脱炭素の手段であり、目的ではない。とはいえ、グローバルでの販売を目指しているならば(とくに欧州や中国向け、できれば日本にも)EVの選択肢は用意されていいだろう。
1955年に誕生して以来68年、16代もの長きにわたって日本のフラッグシップとして君臨してきたクラウン。ネクストステージに上がったいま、ぜひとも「マルチパスウェイ」のフルラインナップを期待したい。