2026年5月26日、AstroXは、気球でロケットを成層圏まで運び空中発射するRockoon方式を用い、2026年度中に民間世界初の宇宙空間到達を目指す「サブオービタルミッション」を発表した。また、スポンサーシッププログラムやペイロード顧客の参画を通じて、多様な宇宙利用市場の開拓を進めていることも公表した。

気球発射型ロケットの打ち上げプロジェクト

AstroXは2022年に創業した宇宙スタートアップで、気球を使用してロケットを成層圏まで輸送してから点火・発射する「Rockoon」方式による柔軟かつ効率的な宇宙輸送サービスの実現を目指している。2026年5月26日、東京都台東区にて記者会見を開催し、2026年度中の実施を目指す「サブオービタルミッション」、次世代ロケット「FOX2」、およびスポンサーシッププログラム「AstroX Rockoon Challenge」を発表した。

サブオービタルミッションは、空中発射方式「Rockoon」によるハイブリッドロケット打上げで宇宙空間(高度100km以上)への到達を目指す実験。この方式で民間企業として世界初の宇宙空間到達を目標に、2026年度中の実施を予定している。

しかも目標は宇宙空間到達だけでなく、有償の輸送サービスも視野に入れているという。2029年のRockoonでの衛星軌道投入、2030年代頭からの商用化、高頻度の衛星打上げ事業に向けた重要なステップに位置づけられているようだ。

今回の実験で使用されるFOX2ロケットは、2024年に打上げ実験を行った「FOX1」(全長約6.3m、重量約176kg)の成果と課題を踏まえて発射方式と推進系を改良した後継機。FOX1は地上発射だったのに対して、FOX2は気球で成層圏まで運ばれた後に点火する仕組みを採用した。大気密度が低い(空気が薄い)成層圏・・・つまり空気抵抗の少ない状態で発射できるようになったことで、従来の地上発射よりも燃料消費効率が向上し、宇宙到達が可能となる。

画像: FOX2ロケットは、空中から発射するタイプのロケット。赤外線誘導で飛行するわけではないようだ。

FOX2ロケットは、空中から発射するタイプのロケット。赤外線誘導で飛行するわけではないようだ。

推進系には、2025年に燃焼試験に成功した成層圏仕様の点火装置を搭載。燃料には従来比で3〜4倍の燃焼速度を持つ低融点熱可塑性樹脂(LT)が採用され、サブオービタルミッションに必要な要求推力を達成している。将来的にはオービタルミッション(地球周回軌道への投入)に向けてロケットの大型化も検討されているようだ。

また、FOX1の発射実験で得た知見をもとに、酸化剤圧力コントロール技術を事前に気球放球で実証し、空気の薄い成層圏でも安定した飛行を実現するスピン安定方式を採用している。

【FOX2 主要仕様】
全長:約5m
dry重量:約126kg
エンジン推力:最大12kN
主要材質:CFRP、GFRP

【2026年度 技術開発マイルストーン・実験計画】
FY2026 Q1〜Q2
・550kg係留実験:これまでで最大規模となる550kgの大型気球を係留し、オペレーション習熟を図る。
・40kg放球実験:AstroXとして初めて大気球を成層圏まで到達させる放球実験を実施。
・100kg放球実験:成層圏環境での初の点火実験を実施。
・750kg放球実験:本番に近い規模となる750kgの大型気球を放球し、成層圏到達を実証。
FY2026 Q3〜Q4
・Rockoonでのサブオービタル(FOX2ロケット)打上げ:一連の実験を経て、Rockoon方式によるハイブリッドロケットの打上げを実施し、民間世界初となるRockoon方式による宇宙空間(高度100km以上)への到達を目指す。

スポンサーシップ:「AstroX Rockoon Challenge」を立ち上げ

AstroXは、「AstroX Rockoon Challenge」というスポンサーシッププログラムも立ち上げ、第1弾のプラチナスポンサーとして、プリント配線板製造の国内トップレベルの企業、日本シイエムケイ(CMK)が参画した。宇宙領域への事業展開を見据え、AstroXのミッションを支えるパートナーとして連携する。

サブオービタルミッション初号機へのペイロード搭載が決定

サブオービタルミッション初号機には、高知工科大学インフラサウンド研究室が最初のペイロード顧客として参画することも発表された。同研究室が開発を進めるインフラサウンドセンサ(人間の耳には聞こえない20Hz以下の超低周波音を検知する装置)を、AstroXのサブオービタルロケットと姿勢制御装置それぞれに搭載する。

画像: 空中発射型ロケットなら、3カ所でインフラサウンド測定できるようになる。

空中発射型ロケットなら、3カ所でインフラサウンド測定できるようになる。

インフラサウンドは、人間には聞こえないものの、自然現象や人工的な事象によって発生し伝播しており、火山噴火・津波・雷・雪崩・隕石突入・ロケット飛行などの計測に活用されています。今回のミッションでは、地上・成層圏・成層圏〜宇宙空間の異なる高度から同一音源を同時に計測することで、従来の地上観測では取得が難しかった高度方向の伝搬特性の解明を目指す方針だ。


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