2025年9月11日、ホンダは一充電あたり295kmの航続距離を実現した新型軽乗用EV「N-ONE e:」を正式発表、翌9月12日より販売を開始した。あせて国内充電ネットワークサ―ビスの「Honda Charge」も同日より展開が始まる。今後の軽EVの行方を占う重要指標として注目を集めている。

軽乗用EVで航続距離295kmを達成。価格は269万9400円~(CEV補助金別)

本年8月1日より公式サイトにて先行予約が開始されていたホンダの新型軽乗用EV「N-ONE e:(エヌワン イー)」が、9月12日より販売が開始された。2024年10月に発売された軽商用EVに次ぐ、ホンダの国内市場EV戦略の第2弾として先行予約の開始以来注目を集めていたが、いよいよユーザーの手元に届けられる。

正式発売となったことで、先行予約時には伏せられていた価格、そして航続距離も明らかになった。

<N-ONE e:のグレード構成/車両価格(税込)>
・N-ONE e:G/269万9400円
・N-ONE e:L/319万8800円
※ともに令和7年度のCEV補助金は57万4000円

グレード構成はシンプルでわかりやすい。ベーシック仕様の「e:G」と上級仕様の「e:L」のふたつだ。価格差は49万9400円と意外や大き目だが、EVとしての基本性能や安全性能(Honda SENSING)は同じ。ゆえに価格差はおもに装備の違いになるが、EVとしての使い勝手に着目すると、「e:L」は50kW急速充電の機能を標準装備するが、「e:G」ではメーカーオプションとなる点には留意しておきたい。

画像: ベーシックグレードの「e:G」。キャップ付きスチールホイールを採用し、グリルには普通充電用給電口が装備される。

ベーシックグレードの「e:G」。キャップ付きスチールホイールを採用し、グリルには普通充電用給電口が装備される。

もっとも、デイリーユースが主で遠出はめったにしないのならば、価格を抑えた「e:G」は非常に魅力的である。本革巻きステアリングホイールやアルミホイールはいらないというユーザーならば、むしろ「e:G」は積極的に選びたいグレードであると言えるだろう。急速充電が必要ならばメーカーオプションで追加すればよい。ちなみに「e:G」「e:L」ともにアウトドアや災害時に活躍する外部給電機能(最大出力1500W)はどちらも備えている。(外部給電には別途、ディーラーオプションのAC外部給電器「Honda Power Supply Connector」が必要

画像: 急速充電システムは「e:L」に標準装備、「e:G」にはメーカーオプション設定されている。

急速充電システムは「e:L」に標準装備、「e:G」にはメーカーオプション設定されている。

そして、目下の話題となっている航続距離について。「e:G」「e:L」ともに一充電走行距離で「295km(WLTCモード)」を達成してきた。事前情報では、ライバル車=日産サクラの1.5倍ほどと言われていただけに、1.6倍以上を実現してきたのは後発とは言え、さすがホンダだ。

搭載されるバッテリーはNMCリチウムイオンで、薄型ながら29.6kWhの大容量。バッテリー低温時にはヒーターの熱で温め、高温時にはラジエターで冷却するシステムを搭載することで、走行距離や充電の安定も実現している。ちなみに充電に要する時間は、普通充電は充電残量警告灯が点灯した時点から満充電まで約4.5時間(充電器出力6kW以上の場合)、急速充電では同時点から充電量80%まで約30分(充電器出力50kW以上の場合)と発表されている。(3.2kWの普通充電では約8.5時間

画像: 薄型大容量バッテリーを新開発。走行距離の延伸だけでなく、車高を立体駐車場対応の1550mm(N-ONE同等)に抑えることも可能にした。

薄型大容量バッテリーを新開発。走行距離の延伸だけでなく、車高を立体駐車場対応の1550mm(N-ONE同等)に抑えることも可能にした。

インテリアにも工夫が凝らされている。床下にバッテリーを搭載しながらベース車となったN-ONEと同等の居住空間や利便性を確保したうえ、より自然な運転姿勢が取れるレイアウトを実現するため、N-ONEに対し、乗車位置はそのままにステアリングを37mmドライバーに近づけることで、ステアリングホイールやアクセルペダルの操作性の向上も図られている。

予防安全・衝突安全性能の充実ぶりも目を惹く。「e:G」「e:L」ともに先進の安全運転支援機能「Honda SENSING(※)」を標準装備。ホンダ軽自動車として初めて「トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)」を搭載したほか、衝突事故での二次被害軽減を支援する「衝突後ブレーキシステム」をN-VAN e:に続き採用採用している。

※衝突軽減ブレーキ<CMBS>/先行車発進お知らせ機能/歩行者事故低減ステアリング/路外逸脱抑制機能/標識認識機能/渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール<ACC>/車線維持支援システム<LKAS>/トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)/オートハイビーム/誤発進抑制機能/後方誤発進抑制機能/近距離衝突軽減ブレーキ/パーキングセンサーシステム(フロント/リア)/急アクセル抑制機能

CHAdeMOでもプラグインチャージ! ホンダ独自の充電ネットワークサ―ビスの「Honda Charge」も展開開始

N-ONE e:の発売と同時(9月12日)に展開が始まるのが、ホンダ独自の充電ネットワークサービス「Honda Charge(ホンダ チャージ)」。充電用プラグを車両に差し込むだけで、ユーザーの認証、充電、決済までが自動で行われるいわゆるプラグインチャージが、ついに始まる。

テスラでお馴染みのシステムだが、国内CHAdeMO規格での採用は初めて。従来のようなカードやスマートフォン操作による認証プロセスを省くことで、充電時の手間や待ちのストレスを大きく低減する。また専用アプリ「Honda Charge」では、充電器の検索から予約、充電の進捗状況確認、決済までを一括で管理でき、計画的な充電計画を立てることが可能になる。

2025年9月時点では732基(急速充電器103基、普通充電器629基)が利用可能と発表されており、今後Honda Cars店舗や商業施設などへの拡大を進めて、2030年までに数千口規模の大規模なネットワークを構築する計画である。なお現時点での対応車種は「N-ONE e:」のみだが、今後登場するEVにも急速充電器を中心に順次適用されていく。

航続距離・安全性能そして充電の利便性など「N-ONE e:」は次世代軽乗用EVのメルクマールに

航続距離・充電の利便性において、「N-ONE e:」は従来の国内EVのネガティブなポイントをことごとくつぶしてきたという点で画期的な存在となりそうだ。くわえて「Honda SENSING」の全車標準装備化、ホンダの軽自動車で初採用となる「シングルペダルコントロール」の採用など、ドライバビリティにおいても妥協はない。

今後、ダイハツ、スズキ、そして中国BYDから軽乗用EVが発売される(BYDは2026年後半の発売を予告)が、「N-ONE e:」は参入のハードルを一気に上げてきた。各社の技術競争は一気に加速するだろう。蛇足ではあるが、最大のライバルとなる日産サクラは、新型登場まであと数年かかりそうだ。現行モデルは2グレード構成で、「e:G」に相当するサクラGが259万9300円、「e:L」に相当するサクラXは308万2200円。ともに令和7年度のCEV補助金は57万4000円。航続距離(WLTCモード)は180kmであるが、サクラはグレードを問わず30kW急速充電・普通充電ともに対応している。車両価格はN-ONE e:のほうがおよそ10万円高い。この差をどう考えるかは、ユーザー次第だ。

<N-ONE e:L主要諸元>
・全長×全幅×全高:3395×1475×1545mm
・最低地上高:140mm
・最小回転半径:4.5m
・乗車定員:4名
・車両重量:1030kg
・室内寸法:長2010(※2024)×幅1300×高1170mm
・駆動方式:FWD
・モーター最高出力:47kW(64ps)
・モーター最大トルク:162Nm(16.5kgm)
・駆動用バッテリー種類:NMCリチウムイオン
・駆動用バッテリー容量:29.6kWh
・一充電走行距離(WLTCモード):295km
※()内はN-ONE e:G

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